ネット通販、オンラインショップ、ECモールの広がりにより、個人を対象としたBtoCの取引が近年増えています。
個人向けの取引の場合、多品種少量の注文が増えることとなり、在庫管理や物流の現場でもそれに対応した変化が求められるようになりました。
限りあるリソースの中で効率よく最大の売り上げを出すためには様々な方法がありますが、その一つに「在庫管理の徹底」が挙げられます。
余剰在庫や欠品による売り逃しを削減し、効率的な在庫管理をするためには在庫分析が不可欠です。
在庫管理における品目毎の特性を分析する方法として主流とされているのがABC分析です。
ABC分析を学ぶことにより「どの商品を残して、どの商品をやめるか」が判断できるようになります。
そこで今回は、ABC分析についてご説明いたします。
目次
ABC分析とは
ABC分析とは在庫商品の売上金額・売上数量・出庫頻度の3項目について、それぞれ累積構成比の多い順にA・B・Cと3つのグループに分類し、管理する手法です。
優先順ごとにグループ分けをし重要な事柄を重点的に管理することで、より効率的な在庫管理を実現することができます。別名「重点分析」とも呼ばれています。
ABC分析は、「パレートの法則」という統計モデルの考え方がベースであると言われています。
パレートの法則は「2:8の法則」や「ばらつきの法則」とも呼ばれ、在庫管理に当てはめると「扱っている全品目のうち、全体の上位2割が全体の8割の売り上げを生み出している」という状態のことを指します。
ABC分析ではこの上位2割をAグループと分類しますが、このAグループが売り上げの8割を作る主要商品であると言えるのです。
扱っている全品目を重要度で的確にグループ分けし、グループごとに管理方法を変えることによって無駄が省かれ、効率的な在庫管理が可能となります。
また、ABC分析は在庫管理だけではなく、マーケティングや売り上げ分析、営業戦略、顧客管理などの様々な経営課題を解決するためにも用いられている分析方法です。
ABC分析のメリット
在庫品目が沢山あると、どの品目を優先的に管理すればよいか、どの程度で発注するべきか等、種類が増えるにつれて判断が難しくなります。
そのような場合にABC分析を行うことで、販売金額を考慮しつつ、在庫管理をどのように行うべきかが明確化されます。
具体的には下記のような例、
・在庫削減がしたいが、どこから手をつけるべきかわからない
・欠品による売り逃しが発生した
・発注数を見誤り、余剰在庫を抱えることになった
このようなお悩みをもつ方におすすめの分析手法です。
在庫管理においてABC分析を活用すれば、倉庫で保管すべき在庫数や発注のタイミングを品目毎に掴めるようになり、効率のよい在庫管理ができます。
ABC分析の進め方
ABC分析において在庫の見直しをする場合、以下の法則に基づいて品目をAからCに分類します。
Aグループ:売れ筋商品、重要度高/累積構成比が7割までの品目
Aグループの品目は売上の大部分を占める最重要品目であるため、絶対に欠品を起こさないよう、重点的な在庫管理を行いましょう。
また、販売価格にもよりますが、Aグループの品目は出荷頻度も高いと想定されますので、効率よく入出庫作業を行えるよう保管場所の見直しもおすすめです。
Bグループ:重要度中/累積構成比が7割から9割の品目
Bグループの品目は基本的に現状維持と考えましょう。あるいは、なるべく欠品がないように一定期間での定期発注を検討してもよいかもしれません。
Cグループ:重要度低/累積構成比が9割から10割の品目
Cグループの品目は売上自体はあるものの全体に占める割合が少なく、在庫管理における重要度はあまり高くはありません。
まずは保管する在庫数や発注タイミングの見直しを行い、品切れ後の発注、または利益が見込める商品への入れ替え、場合によっては取り扱いの停止も検討しましょう。
ABC分析では「パレート図」を活用すると良いでしょう。パレート図とは、値が降順にプロットされた棒グラフと、その累積構成比をあらわす折れ線グラフを組み合わせた複合グラフのことです。
グラフとして図に表すことで、優先的に管理する項目が分かり易くなります。
実際にパレート図でABC分析を進める方法を確認していきましょう。
今回の例では、売上高を評価軸とします。
1.データの収集
まずは取り扱っている各品目の売上高を収集します。
2.データを元にExcelを使い、表にまとめる
「品目名」「売上高」「構成比」「累積構成比」と4つの列がある表を作成します。
「品目名」「売上高」は1.で集めたデータを入力し、「売上高」を基準に降順に並べ替えます。
「構成比」は各個の品目の売上を合計で割って求め、「累積構成比」は構成比を積み上げて計算します。
3.棒グラフを作成する
「品目名」「売上高」「累積構成比」を選択し、集合縦棒グラフを作成します。
4.折れ線グラフを作成する
「累積構成比」を折れ線に変更して、第2軸に入れます。パレート図の完成です。
5.完成したパレート図を元にABCのグループ分けをする
6.ABCのグループ分けを元に在庫管理を実施する
分析の際の評価軸として売上高を用いるケースが主流ですが、販売数量、出荷数、利益率などで算出されることもあります。
ABC分析の注意点
在庫管理の優先度を明確化し、課題の洗い出しに有効とされるABC分析ですが、注意すべき点があります。
一定期間のみに売れる「一過性の商品」の存在です。
「季節で使うもの」「割引販売するもの」「流行のもの」「新商品」などの品目は一定期間だけ売上が大きくなるものであるため、他の品目と同じ条件で評価し上位にグループ分けしてしまうと、余剰在庫に繋がる可能性があります。
ABC分析を行う際は全体の分析結果と、「一過性の商品」の分析結果というように2回に分けて考えると良いでしょう。
また、Aグループの品目とCグループの品目に関連性がある場合も要注意です。
Cグループの品目を廃盤にした結果、それと関連性のあるAグループの品目にも影響が出る可能性があるのです。
Cグループの品目でも上位グループとの関連性がある場合は、重要度は上がりますので注意して検討しましょう。
ABC分析の結果で注意しないといけない季節商品
アパレルや季節・温度などによって売れ行きが変わる商品は非常に注意を払ったABC分析が必要になります。
アパレル商品を例にとりますと、昨年は例年通りの気温であり、通常通り在庫を用意したところ暖冬である為、本来であれば売れるはずであった厚物の商品やアウターなどの売れ行きが例年のように売れずに1年間在庫で残ってしまった。
翌年は再度昨年データを参考に在庫を絞ったところ、例年より早いタイミングで寒波がきて一気に在庫が履けてしまい販売する商品がなくなってしまったというケースです。
夏でも同様な例が該当します。飲料品など例年地球の温暖化とともに暑い夏から飲料など当然売れるであろう数量の在庫レベルを製造したところ、冷夏の夏により飲料が思ったより販売が伸びず在庫が過剰になってしまったというケースはよくあるケースです。
こういった季節商材の強い商品は単純なABC分析からのデータのみではなく、その他の外的要因が大きく販売に影響してくるため、単純な売り上げからのABC分析以外にも外的要因を考慮しリスクを考えた上で在庫量を決める必要があります。
今回は、効率的な在庫管理で売上アップ!物流改善にも役立つABC分析についてご説明しました。
ご参考頂けたら幸いです。
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