モノの流れを指す物流に対して、商流とは所有権の流れを指す言葉です。商流をきちんと把握できていなければ、在庫管理でミスが発生したり、トラブル発生時に責任元が曖昧になったりする恐れがあります。また、商流と物流は同一のものとして扱われることもありますが、業務改善やコスト・納期の最適化のためには、商物分離を意識しなければなりません。
本記事では、商流の意味や物流ビジネスにおける重要性について解説します。物流業務の効率化をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
商流とは
商流とは流通過程の一つであり、商品取引における所有権の流れを指しています。ここでは、商流の意味や読み方、物流との違いをチェックしてみましょう。
商流の意味
商流(しょうりゅう)とは、「商的流通(しょうてきりゅうつう)」の略語であり、取引流通とも呼ばれます。商品の生産から消費活動までの一連の過程で、その商品の所有権が移されていく売買活動の流れのことです。英語では「Commercial distribution」と表記されます。
例えば、商材を下請けし製造した会社からメーカーへ、そして小売りから消費者へと移動させる流通業務などが挙げられるでしょう。このように、流通過程における売買によって所有権が移動する商取引の流れが商流です。
商流と物流の違い
商流と物流の大きな違いは、生産者から消費者に流れるものが所有権なのか、商品などのモノ自体なのかという点です。商流は商品の移動に伴い、企業間や企業と消費者のあいだで発生する所有権や金銭、情報などのデータの移動を指しています。物理的なモノの移動ではなく、受注や発注、出荷、在庫、保管、販売管理といった取引上での流れのことです。
一方の物流は、生産者から消費者のもとへ商品が届けられるまでのモノ自体の流れを指します。例えば、商品を生産元から倉庫へ移動させる作業や、発注された商品を倉庫から販売店へと動かす作業などが挙げられるでしょう。
商流と物流の違いについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事もご参照ください。
商流の重要性
物流ビジネスに携わるのであれば、商流とは何かを知るだけでなく、その重要性も理解しておくことが大切です。商流をきちんと把握することは、適切な在庫管理や業務改善・効率化につながります。
需要と供給のバランスを把握できる
商流が把握できなければ、売上がいつ・どこで・どのように発生しているのかの判断もできません。結果として、生産者や卸売業社に対して適切な商品量の指示ができず、在庫不足・過多になってしまうリスクがあるでしょう。
また、商流だけでなく、物流を含めた全体の流れを把握することも重要になります。生産地域と消費地域、時間軸などの違いにより、商流と物流が絡んで複雑になるケースもあるためです。
万が一流れが複雑になってしまった場合でも、商流と物流を正しく理解できていれば、需要・供給のバランスを把握しやすく、適切な在庫管理も可能となるでしょう。
業務の改善・効率化が図れる
商流を理解すると、商品移動全体の工程も理解できるようになります。商品の品質などに問題が起きたとき、全体の工程を把握していればどの部分で問題が発生したのかがすぐにわかるため、責任を明確にしたうえで改善点を見つけられるでしょう。
自社ではなくほかの企業に責任があった場合も、課題・解決策の提案が的確にできます。これにより、企業間での物流業務の改善も見込めるでしょう。
また、ほかの企業とのやり取りで現場の状況をわかりやすく伝えられたり、トラブル発生時もスピーディに対応できたりする点もメリットです。結果として、企業間の円滑なコミュニケーションにつながります。
商物分離が必要となる理由
商流とは、物流と深く関わっていることが多いものの、同一視するのではなくそれぞれ別のものとして捉えることが重要です。商流と物流を別物として扱う考え方を、商物分離といいます。では、なぜ商物分離が必要になるのか詳しく見ていきましょう。
QCDの明確化
QCD(Quality・Cost・Delivery)とは、品質・コスト・納期のことです。商物分離によって物流と商流を独立させて考えると、QCDを明確化できます。
商流と物流を同時に行っている場合は、配送業務なども販売活動の一つとして認識するため、どちらの工程にどれくらいのコストがかかっているのかわかりにくくなるでしょう。また、納期の把握も難しくなるため、業務効率が下がる可能性もあります。
物流の品質や納期を独立させて考えることで、商流の改善点を見つけやすくなる点が商物分離のメリットです。結果的に、業務全体の品質向上とコスト・納期の適正化を図れるでしょう。
倉庫内作業といった物流業務の効率化
商流と物流が分離されないまま販売管理システムで物流倉庫を運営すると、ピッキングリストと伝票のセットでピッキング作業を行うことになります。伝票でのピッキングは紙に依存した作業となるため、効率化に限界があるだけでなく、ヒューマンエラーも起きやすいのが懸念点です。
商流と物流を分離することで、倉庫管理システム(WMS)を活用できるため、伝票管理やピッキングなどの物流業務の効率化が図れます。
物流業務のアウトソーシング
商物分離ができれば、物流業務のアウトソーシングも可能です。物流業務のプロにお願いすることで、物流全体の品質向上が期待できます。場合によっては、物流コストの削減も見込めるでしょう。
また、物流業務の外部委託により、自社の主力業務に専念できる点もメリットとして挙げられます。今後、社内の人手不足やコストの見直しによってアウトソーシングが必要になったときのためにも、今から商物分離の視点を持つよう意識しましょう。
自社の商流を理解するために取り組みたいこと
自社の商流を理解するための取り組みとして、次の2つが考えられます。
- フロー図の作成・活用
- 販売管理システムの導入
それぞれが商流の理解へどのように役立つのか、詳しく見てみましょう。
フロー図を作成・活用する
生産者から消費者へ商品が届けられるまでの流れを表したフロー図を作成し、活用してみてください。フロー図により客観的な取引情報を把握できるとともに、コストの見直しに関係するポイントを見つけやすくなるためです。
フロー図内には、自社のほかに仕入先や得意先、エンドユーザー、それぞれの基本情報と取引額、選定された理由などを記載し、商流を視覚的に理解できるようにしましょう。
販売管理システムを導入する
販売管理システムとは、受注管理や支払い管理など、商流で発生した取引をデータとして管理できるシステムです。販売管理システムの導入には、以下のようなメリットがあります。
- 複数の取引先の情報をまとめて管理できる
- データ分析によって需要と供給の把握が可能
- 過剰在庫や欠品などの発生を抑えられる
販売管理システムでは商流のデータを一元管理できるため、自社の商流を理解できるだけでなく、データをもとに需要と供給を正確に把握することも可能です。これにより過剰在庫や欠品の発生が抑えられ、業務効率化やコスト削減にも寄与するでしょう。
まとめ
商流とは、商品が生産されてから消費されるまでの過程で、所有権を移す売買活動の流れのことです。商流と物流は切り離せない関係にありますが、一括りにするのではなく、それぞれ別物として考えることで適切な在庫管理ができます。また、自社の商流を理解すれば、品質やコスト、納期の明確化にもつながるでしょう。
ただし、物量が増えてしまい商流と物流が複雑化し、自社での対応が難しくなってきた場合には、業務のアウトソーシングをするのも選択肢の一つです。
浜松委托運送では、物流業務のアウトソーシングを承っています。物流倉庫での在庫管理をはじめとして、流通加工や出荷、輸送まで、物流における効率化や課題解決に向けたご提案が可能です。コストパフォーマンスと高品質のどちらも叶える委託先をお探しの方は、ぜひ浜松委托運送へご相談ください。
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