トレーサビリティとは、製品の移動を追跡可能な状態にすることを指し、食品業界をはじめ、自動車業界や医療業界など、さまざまな業界で導入されています。
この記事では、トレーサビリティの概要や、業界で重要視される理由を解説したうえで、導入におけるメリットと課題をそれぞれ紹介します。
■この記事でわかること
- トレーサビリティの意味や定義
- トレーサビリティ導入の背景やメリット
- トレーサビリティ導入における課題
目次
トレーサビリティとは
トレーサビリティの意味・定義
トレーサビリティとは、原材料の調達から生産、消費までの各工程を追跡可能な状態にすることです。導入することで、製品が「いつ、どこで、どのように、誰によって作られたのか」といったことがわかるようになります。
日本では、牛肉と米にトレーサビリティの実施が法律で義務付けられています。他の食品については食品衛生法によって、できるだけトレーサビリティをおこなうよう努力義務が規定されています。
また、日本産業規格(JIS)が定める「JIS Q 9000:品質マネジメントシステム―基本及び用語―」では、トレーサビリティは以下のように定められています。
・トレーサビリティ(traceability) 対象(3.6.1)の履歴、適用又は所在を追跡できること。 |
なお、トレーサビリティは、食品業界だけはなく、自動車や電子部品、医薬品などの業界で、定義は多少異なりますが、流通業界全体で使われています。
トレーサビリティの種類
トレーサビリティは、以下の2つに分類されます。
- チェーントレーサビリティ
- 内部トレーサビリティ
それぞれの概要や具体例をチェックしていきましょう。
チェーントレーサビリティ
チェーントレーサビリティは、原材料の生産から製造・加工・卸売・小売といったサプライチェーン全体の工程について、製品の履歴を追跡できる状態にすることです。
サプライチェーンには、例えば食品業界であれば、原材料の生産者、製造加工業者、流通・小売業者など、さまざまな事業者が関わります。チェーントレーサビリティの構築には、サプライチェーンに関わる各企業の連携が不可欠です。
内部トレーサビリティ
内部トレーサビリティは、工場内や事業者内など、特定の範囲内で製品の履歴を追跡できる状態にすることです。
チェーントレーサビリティに比べると、対象となる範囲が狭いですが、より詳細に記録を行うことができ、工場内の業務の効率化にも役立ちます。
なぜトレーサビリティが必要なのか?
トレーサビリティが必要とされるのは、製品に何かしらのトラブルが起きた時の備えになるからです。
製品トラブルが起きた場合、その原因をすみやかに特定し、対策しなければなりません。対応が遅かったり、不適切だったりすると、企業への不信感が高まり、事業の継続が難しくなることも考えられるでしょう。
トレーサビリティによって生産から小売りまでの工程を追跡できれば、トラブルの原因を早期発見し、適切に対応することが可能です。
なお、トレーサビリティはこれまで、主に食品業界をメインに行われてきましたが、近年は運送や物流、IT業界などの業界でも注目が高まっています。
食品以外でも消費者が「どこで・誰が・どのように作ったか」がわかることで、安心して利用できるようになります。
トレーサビリティを導入するメリット
トレーサビリティには、以下のようなメリットがあります。
- リスク管理の強化
- 製品の品質維持・向上
- 自社に対する信頼度の向上
それぞれ解説していきます。
リスク管理の強化
トレーサビリティには、リスク管理を強化する役割があります。
上述のとおり、トレーサビリティを導入していれば、製品に不具合やトラブルが起きたときに、原因となった箇所や回収が必要な製品がすぐにわかるため、迅速に対応でき、被害を最小限に抑えることが可能です。
また、原因がわかれば、今後同じことが起きないように対策することもできるでしょう。
製品の品質維持・向上
トレーサビリティの導入は、製品の品質維持や向上にもつながります。トレーサビリティにより、製造や加工、流通など各工程に関する情報が把握でき、改善するべき点が明らかになるためです。
また、工程が記録されているという意識から、各業務の担当者が不備のないように取り組むようになる効果も期待できます。
自社に対する信頼度の向上
トレーサビリティを構築することで、サプライチェーンの透明性を高め、自社の信頼を高めることも可能です。やり取りする製品が、いつ、誰に、どのように作られるかが分かれば、消費者や取引先からの信頼も獲得しやすくなります。
また、前述したリスク管理の強化や、製品の品質維持・向上といった事柄も、自社への信頼やブランドイメージを高める要素となります。
トレーサビリティの導入・取り組みにおける課題
メリットの多いトレーサビリティですが、導入にあたって、以下のような課題も存在します。
- システム導入などのコストがかかる
- サプライヤーとの連携の難しさ
それぞれ見ていきましょう。
システム導入などのコストがかかる
トレーサビリティを導入する際には、初期コストの負担が必要です。具体的には、専用システムの初期費用や、関連する事業者と連携するためのシステム構築などが挙げられます。
また、リスク管理として導入するトレーサビリティは、平時の直接売上に大きな影響を与えるものではないため、短期的な費用対効果を実感しにくい可能性もあります。
サプライヤーとの連携の難しさ
サプライチェーン全体を対象とするチェーントレーサビリティは、範囲が限定的な内部トレーサビリティよりも構築が難しい傾向にあります。
チェーントレーサビリティの導入には関係者との連携が不可欠であるため、段階を踏んで導入や連携の意図を理解してもらわなければなりません。
しかし、トレーサビリティは主に自社のメリットが大きいため、システムの連携に協力してもらえないケースもあるでしょう。
関連する事業者が多い場合は、製品の物流全体における管理者なども立てる必要があるため、全体の連携がなければ導入は難しいのが課題です。
まとめ
トレーサビリティとは、原材料の調達から生産、消費までの各工程を追跡可能な状態にすることです。導入することで、トラブルが起きた際にその原因を迅速に発見でき、適切な対応を取ることが可能になります。サプライチェーンの透明化が図れるため、自社の信頼を高める効果もあるでしょう。
一方で、導入にはコストがかかり、短期的な売上にもつながりにくいため、費用対効果をすぐには感じにくいといった課題も抱えています。また、チェーントレーサビリティの場合はサプライヤーとの連携が不可欠になるため、協力してもらえるよう丁寧な説明が求められるでしょう。
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