近年EC市場は拡大の一途をたどっています。その流れに沿うように、物流業界の果たす役割も益々大きくなっています。スマートフォンやパソコンから気軽に注文できるネット通販も、今は当たり前のものとなりました。
また、新型コロナウィルスは未だ終息してません。そのことも相まって、人々の巣ごもり生活が続く中、物流業界は宅配などを通してとても身近な存在となりました。
一方で、物流業界では多くの課題を抱えています。労働人口の減少やドライバーの高齢化、労働環境など様々です。
この記事では、現在の物流業界が抱えている課題と課題解決の方法について解説します。
目次
倉庫業が抱える物流倉庫の課題
過去から現在に至るまで、物流業界が今ほど欠かせない存在になったことはあったでしょうか。世界中のサプライチェーンが正常に機能していない中で、物流の正常化は急務となっています。
物流の停滞は、人々の社会活動に悪影響を及ぼす可能性があります。その物流の要ともいえる倉庫業務においても、それぞれの現場で多くの課題を抱えているのです。
今後の物流業界を成長させるためには、抱えている課題の顕在化と解決が必要不可欠となります
ここからは、より具体的に倉庫業務における課題について解説していきます。
人手不足
物流業界が抱えている多くの課題の中でも、「人手不足」は特に深刻な問題といえるのではないでしょうか。
日本における物流業界は、パワハラや過酷な労働環境などが度々ニュースなどで報道されたことがあります。このため、特に近年は業界全体がネガティブなイメージを持たれてしまい、人手不足に拍車をかけていると言えます。
加えて、新人の育成にもある程度の時間が必要で、その間は経験豊富なスタッフに業務負荷がかかってしまうという属人的な課題もあるのです。
浜松委托運送では、人事労務システムの導入、在宅ワーカーや外部委託を採用し人手不足とならないよう対策を行っています。
ロケーション変更しにくい
倉庫業務におけるロケーションは、取り扱う貨物の種類や時期によって常に変更するのが望ましいとされています。
しかし、頻繁にロケーションの変更を行うとピッキングミスを増やすことになります。そして、変更の都度、その商品がどこに配置されているのかを覚え直さなければなりません。結果として、作業スタッフの業務効率の低下を招いてしまいます。
こうした理由から、倉庫内のデッドスペースが増えてしまい、スペースの効率的な活用を妨げています。加えて、ロケーション変更しにくい原因にもなっています。
しかし、ロケーション変更を怠ると非効率な作業現場になってしまうため、日々の業務の一環として取り入れ、作業効率の高い現場を目指しましょう。
人的ミス
慢性的な人員不足により、個々の現場ではやむを得ず必要最低限の人員配置で業務を行っていることも少なくありません。
繁忙期を迎えた場合、各作業スタッフに更なる業務負荷がかかります。商品の発送漏れや荷物の数え間違い、荷物を破損させるなどのヒューマンエラーが発生しやすくなってしまいます。
スタッフ同士で相互チェックができない環境は、場合によって、取引先にも迷惑をかけることになりかねず、非常に悩ましい問題と言えるでしょう。
倉庫ごとのマニュアルの違い
一つの企業が複数の倉庫を持っているのはよくあることです。それ故に、倉庫ごとの作業ルールが存在してしまいます。
業務内容は同じはずなのですが、それぞれの現場で最大限業務効率を上げようと考えた結果、現場ごとの独自ルールができてしまったのです。
独自ルールは、倉庫単位でみると効率的に業務を行っているように思えるのですが、時には倉庫間で連携することもあります。その場合は、連絡の行き違いや確認に時間がかかるなど、余分な手間がかかることもあります。
当社のマニュアルは、倉庫・現場ごとに作成していますが、内容が重複している部分は社内で共有し、共通認識ができるようにしています。また、マニュアルを書面化ではなく動画化し、従業員に伝わりやすくする取り組みを行なっています。
在庫管理
倉庫業務において適切な在庫管理は重要な課題です。
当社では、自社独自のWMSシステムを使用し、在庫の管理を行っています。
システム化している業務は主に以下の3点です。
- 入出庫履歴
- 期限切迫商品の抽出
- 棚卸し対象商品の抽出
では実際に、現場では在庫管理に関してどういう課題を抱えているのでしょうか。ここからは、どこの現場でも抱えているであろう代表的なものを解説していきます。
在庫過多
倉庫は日頃から非常に多くの商品を管理・保管していますが、取り扱う商品が多いほど在庫管理は重要になります。
商品によって製造年月日や入出荷の時期が異なるため、それらの情報管理についても正確さが求められます。過剰な在庫を持ったり、必要なときに品物が欠品するなどの不備が発生すると、取引先への悪影響や自社の信用を大きく損ねるでしょう。
こうしたことを未然に防ぐためにも、常に適切な在庫を保つことが求められるのです。
販売の機会損失
倉庫の管理業務において、商品の欠品は何としても未然に防ぎたい問題です。在庫切れが原因で販売機会の損失を招くことは、自社の利益を大きく損ないます。
商品管理の手段として、Excelを使っている現場をよく見かけます。しかし、Excelは表計算用のソフトであり、数値データを元に表の作成や数値の変化をグラフ化するのに適したソフトです。
よって、倉庫現場で行っている大量で複雑なデータの管理には不向きなものです。
棚卸しの手間
倉庫現場で行う棚卸し業務にも課題はあります。現場では定期的に作業スタッフが棚卸しを行い、データ上の在庫と実在庫に不備がないかを確認します。
Excelでの管理は、データ入力までにタイムラグがあったり、入力漏れなどのリスクがつきものです。万が一、不一致を発見したときはデータを過去に遡っての見直しや倉庫内を探し回るという手間がかかります。
Excelで在庫管理をしている現場では、リアルタイムでの情報更新が難しい点にも注意が必要です。
物流倉庫のシステム導入による課題解決
物流倉庫での業務における多くの課題を解決するため、近年関心が高まっているWMS(倉庫管理システム)の概要について説明します。
システムの導入や商品管理のデジタル化とはどのようなものか、具体的な例をいくつか紹介します。
人手不足解消
EC市場の拡大とともに物量が増加した物流現場では、業務のシステム化が進んでいます。自動梱包機や自動封函機、ロボットなど単純作業に特化したシステムへの移行は、労働人口の減少が進む日本において、今後さらに需要が高まるでしょう。
中でも物流ロボットについての関心はとても高まっていると言えます。人の手足の代わりとなる様々な用途のロボットの開発は進んでおり、できるだけ早期の現場への供給が望まれています。
物流ロボットの誕生は作業スタッフの負担を大きく軽減するでしょう。
リアルタイムの情報取得
Excel管理では、入出荷の実績や在庫情報を即時に反映させるのは難しいと言えます。WMSの導入で、作業スタッフがハンディターミナルを用いて情報入力するとリアルタイムでシステム上に反映されます。
WMSは複数のパソコンからの同時アクセスが可能です。これにより、あらゆる商品の在庫状況及び発送情報をリアルタイムで共有できるようになります。
不要な商品の移動や発注など、余分な作業を未然に防ぐことができます。
作業の効率化
WMSを用いることで、倉庫内の情報は端末を通してリアルタイムに入手できます。倉庫内のロケーション変更を頻繁に行ったとしても、その影響は最低限でとどめておくことができます。
ピッキングのときも端末からロケーション情報を確認できるため、業務効率が低下することはありません。また、採用したばかりの新人スタッフでも、商品の配置を覚えなくてもいいので、ベテランスタッフとの経験の差を感じることなく業務を行えます。
人的ミスの低減
WMSの導入は、ヒューマンエラーの削減にも効果があります。Excel管理では、人に頼る作業のため入力間違いや漏れというのを完全に無くすことはできません。
WMSでは、端末を利用することにより各工程の実績を即座に更新可能です。このため、正確な情報を元に業務効率化の実現が可能になります。
さらに、端末の機種によっては、バーコードのない商品やコード化できない商品の情報を読み取れるものもあります。人による目視や手入力の手間を極力減らして、より正確な運用が可能です。
複数倉庫での在庫共有
WMSの導入で、複数倉庫・複数拠点での情報管理も容易になります。荷主ごとに入出荷の管理・在庫管理が可能になる上に、複数の倉庫の在庫情報も管理できるため、新規で倉庫の構築も可能です。
WMSは倉庫ごとの独自ルールを無くすこともできます。端末を使用することで倉庫間の情報を共有するため、独自ルールを撤廃し、作業の標準化と在庫管理の精度向上を実現することが可能です。
余剰在庫をなくし期限切れの在庫を持つことなく、より良いサービスの提供が実現できます。
AIによる情報の分析
近年発展がめざましいAIを活用した物流システムの構築も課題解決のための手段の一つとなるでしょう。
AIによって勤怠管理の最適化ができれば、人件費やコスト削減ができるかもしれません。AIはトラックなどの車両管理を行い、道路状況からより正確な到着時間を予測できるようになる可能性もあります。
十分に発達したAIは、宅配業においても顧客がどの時間に在宅している可能性が高いかを予測できるようになるとも言われています。そうなれば、再配達のリスクを減らし、ドライバーの負担を軽減することにも繋がるのです。
物流倉庫のシステム導入への新たな課題と対策
物流業界でも、デジタル技術を利用し、新しいビジネスや業務プロセスの改革を行う取り組みとしてDX(デジタルトランスフォーメーション)が注目されています。多くの企業ではDX導入の必要性を感じているものの、企業の規模によって取り組みに大きな差があることも分かっています。
これからは、企業もシステムだけではなく人に対しても投資をすることが求められます。自社で人材を育てるにしても、社外の人材を活用するにしても、時間も費用も必要です。
物流業界の成長のために、人材育成に対して中長期的な計画が必要になるでしょう。
物流倉庫の自動化についてはこちらをご覧ください。
物流倉庫を自動化するシステムのメリットと課題!費用対効果を考えよう
まとめ
物流倉庫が抱える課題は、一つの原因ではなく色々な事象が重なりあって発生しています。慢性的な人員不足やドライバーの高齢化、新しい業務システムへの対応など、課題解決は一朝一夕でできることではありません。
それぞれの現場で課題を洗い出し、スタッフ全員で現場に合った対策を選ぶことが重要であると思います。
これからも、より良い現場を作っていくためにもWMSやDXなどの新しいシステムに関する知識について深めていくことが大切です。
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