「物流」にはさまざまなフローが含まれ、業態や扱う品物によってその方法は多岐にわたります。なかでも食品物流は高度な品質維持が求められる、特殊な世界といえるでしょう。近年は、流通過程における厳格なルールや制度が敷かれたことで、品質維持のニーズは高まる一方です。
本記事では、食品物流の一つであるコールドチェーン(低温物流)についてわかりやすく解説していきます。冷凍食品・生鮮食品・水産物などの食品物流や医薬品物流に携わっている方は、今一度コールドチェーンの重要性を理解していきましょう。
目次
コールドチェーンとは?
コールドチェーンの意味・定義
コールドチェーンは日本語で「低温物流」を意味し、低温管理が求められる商品を冷蔵、または冷凍の温度を保った状態で消費地まで配送する方法です。これにより消費者の元に届くまで一定の温度を保ち、品質維持ができます。
従来の常温配送では不可能だった冷蔵・冷凍商品の遠方への配送ができるようになり、物流の幅が広がりました。また、EC市場の拡大とともに需要が高まっている昨今、わたしたちの生活に必要不可欠なものとなっています。
なおコールドチェーンで利用されている急速冷凍機などの機械は、常温物流とは異なる仕様となっており、コールドチェーン導入の際には新たに機械の準備が必要です。
コールドチェーンで扱うもの
コールドチェーンで扱うものは、主に以下の2つです。
- 低温保存が必要な商品
- 医療品・ワクチン
これらに低温保存が必要な理由や背景を詳しく見ていきましょう。
低温保存が必要な食品
低温保存が必要な食品には、スーパーやコンビニで売られている冷凍食品、アイス、生鮮食品や水産物などが挙げられます。2021年にHACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)が義務化されたことで、ますますコールドチェーンが重要になりました。
HACCPとは、食品の安全性を守るための衛生管理手法のことです。食品事故が発生しやすい工程を分析して、どのようにすれば安全確保ができるか継続的に調査・記録することで食品の安全性を保ちます。
流通過程においては、コールドチェーンによる低温保存を活用し、いかなる場合においても食中毒が発生しないよう注意しなければなりません。
医薬品・ワクチン
新型コロナウイルスのワクチン・治療薬やバイオ医療、再生治療などの高度医療分野でも、コールドチェーンは重要視されています。
ワクチンの管理には厳格なルールが設けられており、輸入から接種会場、施設の移送までの温度を徹底的に管理しなければなりません。万が一温度管理ができていなかった場合、健康被害の可能性があるため廃棄する必要があります。
医療薬品やワクチンなどの繊細な取り扱いが求められるものを運ぶ際には、空港輸送と陸上輸送の間にもコールドチェーンによる徹底した温度管理が必要不可欠です。
コールドチェーン物流のシステム・仕組み
商品の入荷から低温を保ち配送ができるコールドチェーンは、どのような仕組みで行われているのかみていきましょう。
生産・加工
コールドチェーンでは、果物や野菜を扱う場合、商品の出荷前に低温状態に処理をする、予冷と呼ばれる作業を行います。この予冷を行うことで、高い品質の保持がしやすくなります。
予冷をした商品はすでに常温での温度帯ではなくなっているため、予冷に対応している冷蔵庫での管理が必要です。
魚や肉などの生鮮食品の場合は初めから冷凍をします。しかし、冷凍に時間をかけてしまうと細胞破壊につながり品質が大幅に低下してしまうので、品質を維持したまま消費者に届けることが不可能となってしまう恐れがあるのです。
このように、商品によって方法は変わるため、熟練された知識が必要になる場合もあります。
輸送・保管
輸送中の段階での保管体制が整っていないと、品質維持が困難となります。配送先によっては長時間配送を要される場合もあり、温度管理は倉庫内よりも難しく注意が必要です。
遠方配送の場合、途中で中継地点とされる倉庫を挟むケースもあります。そのような状況でも、商品の保管温度に対応している倉庫の使用が必要となるため、事前の配送ルートの確認が必須です。
また、コールドチェーンは飛行機や船での輸送にも対応しているため、最適な配送方法についてこれらも視野に入れながら検討してみましょう。
消費
コールドチェーンで配送した商品は、到着した後も一定期間、冷蔵庫や冷凍庫内で保存されることが考えられます。
消費されるまでに時間がかかることが一般的とされているため、配送したことがゴールではなく、配送後も品質の維持ができるような状態を作ることが重要になります。
保管しやすいような形状のパッケージにしたり、長期間低温保存を行っても傷みにくいような加工を施したりしています。
コールドチェーンが必要とされる理由
コールドチェーンがあることによって、新鮮な食品の提供や医薬品ワクチンの普及が可能になります。詳しくみていきましょう。
正確な品質管理で新鮮な商品が届けられる
食品は、ものによっては常温で輸送することで、品質が劣化してしまう可能性もあります。しかしコールドチェーンが登場したことによって、新鮮な状態で消費者まで届けることが可能になり、生産地の味に限りなく近い状態での配送ができるようになりました。
味や風味が落ちることなく届くことで、消費者の満足度も上がるため、冷凍食品業界に良い影響を与えています。
医薬品不足の地域への配送が可能
低温管理が必要な医薬品ワクチンは、常温流通のままでは、配送距離に限度があり、配送の難しい地域では医薬品不足の問題が起きてしまうこともありました。
しかし、コールドチェーンの登場で、低温状態を維持したままの配送が可能となったため、配送エリアも拡大でき、日本各地に医薬品を届けられるようになりました。コールドチェーンは医療にも役立っていて、私たちの生活を支える大きなものとして存在しています。
廃棄ロスの削減が可能
コールドチェーンによって、低温での保管が可能になったため、配送距離が長く時間がかかってしまっても、食品が腐ってしまうことはありません。鮮度が保持できる期間を延ばすことで、食品の廃棄を大幅に減らすことが可能となりました。
また、食品の産地先でも急速予冷をすることができるため、収穫してすぐの新鮮な状態のまま、食品を保持することが可能です。
通信販売の急増でコールドチェーンの需要も高まる
巣篭もりの需要も高くなりつつあった影響で、冷凍食品の国内消費量の推移は右肩上がりで増加しています。また、通信販売の拡大に伴い、品質保持が可能なコールドチェーンの需要も高まっています。
食品を冷凍しても味を落とすことなく、消費者に届けることができるコールドチェーンは今後さらに、需要が高まるでしょう。
コールドチェーン導入のポイント
コールドチェーンの導入にあたっては、いくつかのポイントをおさえておくことで後悔のリスクを低減させることが可能です。導入時の課題になりやすい点をふまえたうえで、3つのポイントを解説します。
設備・維持管理コストの確認
コールドチェーンは、商品に合わせて適切な温度管理が重要になってくるため、常温倉庫と比較すると設備の面からコストがかかることが想定されます。徹底した温度管理には専門的な知識が必要となるため、人材確保にもコストがかかります。
また、品質維持のためには迅速で正確な対応も必要です。業務フローの構築や、配送ルートの選定など、時間の負担も懸念されるでしょう。
費用・時間の面からコールドチェーンを導入しても問題がないか確認が必要です。
一定の温度を保つための高いスキルが必要
コールドチェーンは、温度管理を間違えてしまうと品質に悪影響がもたらされます。全国各地からの配送需要は高いため、業務フローや配送ルートは事前に確認しますが、トラブルが起きてしまう可能性もあります。
そのような時に、状況に応じて対応できる高いスキルが必須になってくるでしょう。このような人材を確保する必要性もあります。
管理する人員の確保やシステムの導入
低温での作業は、体への負担がかかってしまうこともあります。しかし、防寒着の着用などを行い事前に予防しておくことで、体調面への負担は軽減することが可能です。
ちょっとしたミスで品質が劣化してしまい廃棄となってしまう場合もあるため、管理を行う担当者は気を緩めずに作業をしなければなりません。
また、在庫管理システムは使用環境条件があるため、温度の低い冷凍・冷蔵倉庫では常温倉庫と同じものが使用できないケースもあります。使えない場合は、在庫確認業務における人員が必要になります。状況によっては、対応可能なシステムの導入ができるかどうかも検討しましょう。
まとめ
コールドチェーンとは、低温状態で高い品質を保ったまま、消費者の元に商品を届けることのできる物流方式です。
コールドチェーンの登場によって、配送対応可能な商品の幅も広がり、物流業界に大きな影響を与えていることは間違いありません。導入によって不随するメリット・デメリットを確認し、検討してみてください。
また、導入にあたって設備の準備や維持にコストや時間がかかるため、温度管理が可能である物流倉庫会社へ外部委託するという方法も選択肢の一つです。
浜松委托運送では低温倉庫、冷蔵倉庫の物流業務も行なっています。これらの倉庫は保税地域になっているため、海外との取引がある場合も一貫して対応できる点が強みです。
コールドチェーンの委託を視野に入れている方は、ぜひ浜松委托運送にご相談ください。
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