貨物にはそれぞれ適した保管環境があり、なかでも食品類の多くは温度に関して適切な管理下に置かなければなりません。そこで役に立つのが冷蔵倉庫です。
冷蔵倉庫の利用には多くのメリットがあり、今後さらに需要が高まることが予想されています。しかし、冷蔵倉庫と冷凍倉庫との違いがよくわからない、委託倉庫の利用を考えたとき選び方に迷うという方も多いかもしれません。
本記事では、冷蔵倉庫の定義と特徴を解説するとともに、委託のメリットにも触れています。また、選び方のポイントも紹介しているため、冷蔵倉庫の利用を検討中の方は参考にしてみてください。
目次
冷蔵倉庫とは?
冷蔵倉庫とは、保管する物品の特性に合わせて、10℃以下の温度で保管を行う倉庫のことを指します。
冷蔵倉庫は主に水産物、畜産物、冷凍食品、医薬品といった低温管理が必要な物品の保管に利用されており、低温のまま荷物を流通させるコールドチェーン(低温物流)に欠かせない施設です。
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冷蔵倉庫の定義
冷蔵倉庫は、10℃以下の温度で保たれている倉庫になります。主に以下のような食品の保管に適しています。
- 乳製品
- 練り製品
- 農産物
- 食肉
保管を依頼された貨物は、適切な環境下に置かなければいけません。このため倉庫業法に基づき登録を受けた冷蔵倉庫のみが、営業冷蔵倉庫として他社の貨物を保管できます。
冷蔵倉庫は全国に2,000ヶ所以上ありますが、それらは立地や目的に応じて以下の3種類に分類可能です。
湾岸型冷蔵倉庫 | 貿易港の近くにある冷蔵倉庫 |
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産地型冷蔵倉庫 | 野菜や果物の産地、漁港の近くにある冷蔵倉庫 |
流通型冷蔵倉庫 | 交通の便が良いところにある冷蔵倉庫 ※スーパーやコンビニなどにスムーズに出荷するため |
冷蔵倉庫があることで、必要なときに必要な量の貨物を出荷でき、安定して消費者に供給できます。
冷蔵倉庫の特徴
冷蔵倉庫を利用することで低温管理が必要な荷物の品質を維持し、保存期間を延ばすことが可能です。生鮮食品などの品質が劣化しやすい荷物は、鮮度を保つことで消費者の安全性を確保できます。
また、キャンセルなどで急に出荷できなくなった場合も、保存期間が長ければ廃棄せず保管し続けることもできるので、廃棄ロスの削減につながります。
ただし冷蔵倉庫は温度調整を行わない倉庫に比べ、設備にかかるコストが高くなるため注意が必要です。
冷凍倉庫との違い
冷蔵倉庫と冷凍倉庫の大きな違いは、倉庫内の温度です。冷蔵倉庫は-18℃~10℃まで、冷凍倉庫は-18℃以下の倉庫を指します。
冷蔵倉庫の分類のなかに、冷凍倉庫が内包されているとも言えるでしょう。とはいえ温度が違うことから、管理できる品物も異なります。冷蔵倉庫と冷凍倉庫それぞれに適した品物の例は、以下のとおりです。
冷蔵倉庫 | 食肉や乳製品、水産物や農産物など |
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冷凍倉庫 | アイスクリームや魚類、冷凍食品など |
冷凍倉庫の特徴や機能(温度)については、こちらのページでも詳しく解説しています。
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外部の冷蔵倉庫を利用するメリット
外部の冷蔵倉庫を利用するメリットとして、大きく3つが挙げられます。
- 冷蔵倉庫のニーズが増えている
- 自社で管理するよりコスト削減につながる
- 出荷波動に強い(通常時の出荷量の増加)
それぞれ詳しく解説します。
冷蔵倉庫のニーズが増えている
近年、アジア太平洋地域の各国で中間所得層が増えたことで、生鮮食品や冷凍食品の消費量が急増しています。このため冷蔵倉庫の需要に対して、供給が追いついていない状態です。今後10年間でアジア太平洋地域の冷蔵倉庫市場は、現在の5倍以上の規模になるとも言われています。
また、需要増加のもう一つの要因がコロナ禍の影響です。モバイルオーダーによる食品配送サービスの利用者が増えたことで、冷蔵倉庫での管理が必要な在庫が増加しました。
これらの背景から今後もニーズが高まることが予想され、新規事業として参入する価値もあるでしょう。入荷から配送まで一貫して対応できれば、さらなる強みとなります。
自社で管理するよりコスト削減につながる
業務用の冷蔵倉庫では、温度や湿度以外にも国土交通省の定める基準を満たす必要があります。また、24時間温度を管理するためにコストもかかるでしょう。
倉庫の面積が小さければコストは抑えやすくなるものの、保管したい物が収納できなければ意味がありません。自社で冷蔵倉庫を持つのは、長期的な運用を考えるとメンテナンス費用も含めコストの負担が大きくなりやすい点がデメリットです。
長期的な利用を考えた場合、メンテナンスや運用コストを踏まえると、冷蔵倉庫を委託したほうがコストを抑えられるでしょう。
また、これまで冷蔵倉庫の冷媒としてよく使われていたフロンガスの一種は、2020年時点で生産全廃となりました(途上国では2030年に原則全廃)。築年数の経過した施設は、建て替えの必要性に迫られていることも覚えておきましょう。
出荷波動に強い
冷蔵倉庫を委託すると、出荷波動が大きいタイミングでも安定した製品供給が可能です。出荷波動への対応はもちろん、通常時の最大出荷量の拡大にもつながります。
実際に浜松委托運送でも、出荷量についてご相談いただくケースは少なくありません。対応できる出荷量が増えると、売上アップに直結するなど多くのメリットが期待できます。冷蔵倉庫に限らず、自社管理から委託に切り替えるきっかけとしても多い傾向です。
事業者が冷蔵倉庫を委託する際のポイント
ここからは、物流事業者の方が冷蔵倉庫を委託する際のポイントを紹介します。
- 利用時にかかるコストを把握しておく
- 自社の特性を踏まえた立地の倉庫を選ぶ
- どういったサービスまで対応してくれるか
それぞれ詳しく見てみましょう。
利用時にかかるコストを把握しておく
冷蔵倉庫の利用にあたっては、コストをあらかじめ確認しておくことが大切です。冷蔵倉庫の利用時にかかるコストには、以下が挙げられます。
固定費 |
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変動費 |
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冷蔵倉庫内の温度調整には光熱費がかかるため、通常の保管料にプラスの費用がかかります。さらに倉庫運用のための人件費も発生するでしょう。コストが高くなりやすいぶん、費用の内訳をきちんと把握したうえで比較するのが賢明です。
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自社の特性を踏まえた立地の倉庫を選ぶ
自社の取り扱う製品や配送エリアを考慮し、最適な立地の冷蔵倉庫を選びましょう。産地・工場に近いところが良いのか、交通網が発達している場所が良いのかなど、検討する要素はさまざまです。
倉庫の保管料は、地域によってある程度の相場が決まっています。首都圏や近畿圏ほどコストが高く、地方の倉庫は安くなるのが一般的です。ただし、保管料の安さだけで地方の倉庫を選んでしまうと、首都圏への配送費がかさんでしまいます。
配送エリアに地の利がある場所の冷蔵倉庫を選ぶと、配送費を抑えつつ短時間での配送を叶えやすくなるでしょう。保管料や貨物の値動きなど、コストと立地のバランスを考えて選ぶことが大切です。
サービスはどこまで対応してくれるか
委託する冷蔵倉庫によって、どの業務まで対応できるのかは異なります。特にEC市場の拡大によって、冷蔵倉庫は従来通りの在庫保管だけではなく、流通加工・出荷への対応も求められるようになりました。さらに多品種少量の商品を管理する能力、高頻度の出荷能力も重要視すべきポイントと言えるでしょう。
あらかじめ、委託先の対応範囲やサービスの強みはチェックしておくのがベターです。例えば注文のキャンセル・変更が生じた際に対応が遅れてしまうと、誤発注につながりかねません。在庫の管理体制の心強さは、顧客からの信頼にも直結します。
また、自社製品と類似する製品の取り扱い実績も確認しましょう。類似品に関するノウハウの有無は、安心して委託できるかどうかの判断材料となります。
冷蔵倉庫まとめ
冷蔵倉庫は10℃以下で温度が保たれているという特性から、低温管理が必要な製品の保管に適しています。今後も需要が高まることが予想される一方で、自社で冷蔵倉庫を所持・運用する場合にはコストがかかるのが懸念点です。
冷蔵倉庫の委託、あるいは物流業務そのものの委託も視野に入れてみましょう。物流業務全体をアウトソーシングすることで、自社のメイン業務に注力しやすくなります。
浜松委托運送では、冷蔵倉庫のほか冷凍倉庫・定温倉庫なども完備しており、あらゆる商品を適切に保管可能です。輸入から運送までを一貫して依頼できるため、業務効率化はもちろんのことコスト削減にもつながります。
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