保税倉庫は、輸入された貨物の一時的な保管を目的として設置されている地域です。 通関が完了するまで貨物は「外国貨物」として扱われ、法の監督下であるこの地域で管理されます。
輸入ビジネスにおいて欠かせない存在とも言える保税倉庫ですが、ただ貨物を保管しておくためだけの倉庫と捉えている方も多いかもしれません。
じつは保税倉庫の利用には、多くのメリットがあります。上手に活用するために注意したいポイントとあわせて確認してみましょう。
目次
保税倉庫のメリット
日本貿易振興会(JETRO)のHPでは、保税蔵置場およびインランド・デポ(内陸保税蔵置場)のメリットとして10の項目を挙げています。その多くは、輸入時にかかるコストに関わるものです。
ここではJETROのページをもとに、保税倉庫を活用することの利点を項目別に詳しく解説します。
保税蔵置場と保税倉庫の違いについてはこちらをご覧ください。
輸出入時の税制上の優遇措置
保税地域の代表的なメリットは、税制上で得られる優遇措置です。
具体的には、蔵置期間中の免税、滅却処分時の免税、そして出展品や資材の免税を指します。それぞれどういった内容なのか見てみましょう。
蔵置期間中の免税
保税蔵置場に保管されている外国貨物には、関税や消費税などの税金が課されません。これらが発生するのは輸入申告が済み、その貨物を個人または法人が引き取るタイミングです。
つまり保税地域に蔵置しているあいだの資金調達は不要で、金利負担も発生しないというメリットがあります。
保税蔵置場の場合、蔵置期間は原則2年間ですが、申請により延長も可能です。
滅却処分時の免税
保税地域にある外国貨物に、腐敗や変質などが起こる可能性もゼロではありません。
結果として廃棄がやむを得ないとき、税関長の承認を受け、所定の手続きをすることによって滅却処分が可能です。このとき輸入申告の必要はなく、関税納付義務は免除されます。
出展品や資材の免税
展示会や博覧会のため外国から出展品、資材などが保税蔵置場に持ち込まれた場合、税関長の許可を受けたのち、関税・消費税を未納のままそれらを展示・使用することが可能です。
ただし、展示品を販売するには輸入申告が必要になります。
輸送コストの削減
保税蔵置所から直接出荷倉庫へ搬入できることから、輸送にかかる費用を削減可能というメリットもあります。
ここでは、輸送コストに着目した2つのポイントを見てみましょう。
外国貨物のまま積み戻し可能
貨物が不良品だったり、規制の改正などなんらかの事情で輸入貨物の引き取りができなくなったりする場合もあるでしょう。
このとき、保税蔵置場で保管していれば外国貨物のままで積み戻すことが可能です。
混載荷物の積載と搬送の効率化
輸入品のなかにはコンテナに載らないほど大きい重量物の貨物や、バルクカーゴ(石炭や穀物など粉粒体のまま運ばれる貨物)もあります。
保税蔵置場内にこうした超重量品やバルクカーゴも扱えるような設備とスペースがあれば、コンテナのバンニング(荷詰め)作業および混載貨物の積載、バルクカーゴの搬送まで一貫して行うことが可能です。
業務の効率化
ここからは、業務の効率化という視点で保税蔵置場の利点を解説します。
保税蔵置場では貨物の保管だけではなく、必要に応じた作業や持ち出しもできるという点に着目してみましょう。
外国貨物のまま輸出入品の各種作業や転売可能
保税地域内で関税が保留されている状態でも、食品の加熱やラベル貼り、包装などの物流加工を行うことが可能です。
さらに、外国貨物のまま他国へ転売することも認められており、関税や消費税を払わずに海外へ売却ができます。
見本として一時的に持ち出し可能
保税蔵置所にある外国貨物は、税関長の許可を受けることで見本品として一時的に持ち出しが許されています。
これにより商取引が便利になるほか、成分の分析などにも役立てられるでしょう。ただし持ち出せるのは少量で、課税上問題がないものに限られます。
需要や商機に応じた引き取り可能
原油やアパレル品など商機の見極めが必要な貨物は、需要に応じたタイミングで引き取りが可能です。
また、一度に貨物すべてを引き取る必要はなく、一部のみ輸入申告をして残りは外国貨物のまま蔵置しておくという使い方もできます。
保税倉庫のデメリット
保税蔵置場にはこのように多くのメリットがありますが、それと同時にいくつかのデメリットも抱えています。
利用するにあたって覚えておきたい「製品の取り外しリスク」「精算プロセスの複雑化」「商品の在庫リスク」の3点について説明します。
製品の取り外しリスク
保税蔵置場の蔵置期間は原則2年間ですが、税関長の承認を受けることでその期間を延長することもできます。
しかし、指定された期間内に関税の支払いを行わなかった場合、税関によって貨物が競売に出される可能性もあるため注意しましょう。この競売を取り消すには、ペナルティを支払わなければなりません。
保税倉庫の期間について詳しくはこちらをご覧ください。
保税倉庫に貨物を保管できる期間はどのくらい?期間を過ぎるとペナルティも
精算プロセスの複雑化
保税地域から貨物を引き取るには、関税や消費税を支払う必要があります。
これに伴う必要書類を作成して税関に提出するとき、会計処理が複雑になるケースもあるでしょう。たとえば複数サプライヤーから複数商品を調達している場合や、過剰在庫・欠品が多い場合などが挙げられます。
商品の在庫リスク
保税蔵置所に保管している貨物は、必要分だけ輸入し販売できる一方で、売れ残りなどによる「過剰在庫」のリスクがあるのが実情です。
賞味期限が切れてしまったら商品価値はなくなりますし、モデル遅れになれば商品価値の下落の恐れ、また劣化や売れ残りの可能性もあり得ます。
浜松委托運送の保税倉庫のメリット
保税倉庫は日本全国にありますが、なかでも浜松委托運送の強みは、浜松という土地柄もあって輸送にかかるコストはもちろん、物流サービスに関するコストを抑えることができるという点です。
その要因のひとつに「港湾法」が挙げられます。
港湾法とは、港湾の整備と適切な運営を目的として設けられているさまざまなルールのことです。静岡近辺では清水・三河・横須賀などが港湾法の対象地域です。
この地域では労働者を守るためにさまざまな規制があり、提供されるサービスが高価になりやすい傾向にあります。
また、保税倉庫というと港にあるイメージが強いかもしれませんが、浜松委托運送は内陸倉庫(インランド・デポ)の面も兼ね備えています。こうした内陸保税倉庫は群馬にもあり、関東圏・関西圏はもちろん全国幅広く対応できるのが強みです。
まとめ
日本貿易振興会(JETRO)が掲げている保税蔵置場利用上のメリットを、詳しく掘り下げてみました。
保税蔵置場では、税関の監督下に置かれることから安全に貨物を保管できます。さらに税制上の優遇措置や輸送コストの削減など、金銭面でも多くの利点があると言えるでしょう。
その反面、製品の取り外しリスクや精算プロセスの複雑化、商品の在庫リスクといったデメリットが伴うことも事実です。
これらの注意点をきちんとふまえたうえで、輸入ビジネス効率化のため賢く活用してみてはいかがでしょうか。
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