海外の商品を扱う物流業では「保税」という用語をよく耳にします。保税制度や保税品、保税地域などいろいろな場面で使われていますが、その意味を詳しくは知らないという方も多いかもしれません。
なかでも保税制度は、外国貨物を一時置きする保税地域や保税地域間の運送などに関して定められたルールであり、安全で円滑な貿易を行うために必要不可欠です。
今回は保税制度の基本的な知識や保税地域の種類、輸出入時の通関の流れについて解説します。
目次
保税とは
保税とは輸入品にかかる関税を一時保留することを指しますが、保税制度は関税を保留することが目的ではありません。
保税制度では、円滑に税関を行うため外国からの貨物はまず保税地域に蔵置する必要があることなど、貿易における大前提をはじめとした規制が定められています。
保税制度の概要から見てみましょう。
保税制度の意義と目的
保税制度は、大きく以下3つの制度から成り立っています。
- ①保税地域制度:輸出入貨物を税関の監督下に置くための場所の設置
- ②保税運送制度(OLT):保税地域間のみ外国貨物のまま運送することを承認
- ③収容・公売制度:保税地域にある蔵置期間が経過した貨物への対処
保税地域制度とは、税関手続きが必要な貨物を法の規則下で管理するため、保管場所を制限する制度です。保税地域は利用方法や保管期間によってさらに5種類に分類されます。
次に保税運送制度は、外国貨物のまま国内の保税地域間を運送する際のルールを定めたものです。たとえば、船で輸入されたコンテナを内陸の保税倉庫まで陸送する場合などがこれにあたります。
収容・公売制度とは、保管期間が過ぎた貨物や腐敗してしまった食品貨物など、保税地域の利用の妨げになる貨物への対応について定めた制度です。密輸・抜き取りなどを防ぎ、税を適切に徴収することに加え、貿易の効率化を目的としています。
保税品とは
保税品とは、輸入品でまだ通関前の状態(外国貨物)のものです。例として浜松委托運送株式会社では、ワインやチーズなどの食料品、アパレル商品などを多く扱っています。
保税品に関してもいくつかの規制があり、簡単な加工(ラベル貼り、値札付けなど)や見本品の持ち出しをするとなれば税関長の許可が必要です。
正しい手順を踏めば外国貨物の状態で加工や検査を行えるため、税関を通るまでは関税を留保できるというメリットがあります。
保税地域とは
保税地域の目的は、正常な税関の実施と貿易の効率化・振興を目指すことです。これをふまえたうえで、保税地域は機能と役割に合わせて全国各地に置かれています。
ここでは保税地域の種類と、全国の保税地域に関する情報を確認してみましょう。
保税地域の種類
上記でも少し触れたとおり、保税地域は「指定保税地域」「保税蔵置所」「保税工場」「保税展示場」「総合保税地域」の5種類に分けられます。
その違いは、利用目的によって異なる施設の機能や外国貨物の保管(蔵置)期間によるものです。
指定保税地域
主な機能:外国貨物の積卸し・運搬・蔵置(短期)
蔵置期間:1ヶ月
設置の手続き:財務大臣が指定
保税蔵置場
主な機能:外国貨物の積卸し・運搬・蔵置
蔵置期間:2年(延長可)
設置の手続き:税関長が許可
保税工場
主な機能:外国貨物の積卸し・運搬・蔵置
蔵置期間:2年(延長可)
設置の手続き:税関長が許可
保税展示場
主な機能:外国貨物の展示
蔵置期間:税関長が必要と認めた期間
設置の手続き:税関長が許可
総合保税地域
主な機能:保税蔵置場、保税工場、保税展示場の機能を総合
蔵置期間:2年間(延長可)
設置の手続き:税関長が許可
参照:保税地域の概要 |税関
外国貨物を扱うことから港のコンテナヤードや倉庫のイメージが強いかもしれませんが、工場、展示場といった利用方法もあります。
指定保税地域
指定保税地域は、財務大臣の指定によって設置される公共の場所です。港や空港での税関手続きを簡易かつスピーディに処理できるよう、コンテナヤードのように輸出入品の積卸し、運搬、蔵置をする機能を持っています。
税関手続きの荷さばき場として多くの人に利用されるため、蔵置期間は1ヶ月と短めです。それに伴い、指定保税地域での貨物の複雑な加工などは認められていません。
保税蔵置場
指定保税地域と同様、保税蔵置場は輸出入品の積卸し、運搬、蔵置機能を持った施設です。
しかし蔵置期間は2年間と長く、さらに申請が通れば期間の延長もできます。保税蔵置場の設置には、長期保管が可能な施設であることが認められたうえで、税関長の許可が必要です。
指定保税地域が通関の荷さばき場の役割を担っていたのに対し、保税蔵置場は外国貨物の保管や中継地点の役割を果たします。
ワインやブランデーなどの酒類やアパレル品をはじめとした、出荷時期まで外国貨物の状態で保管しておきたい貨物に適していると言えるしょう。
保税倉庫について詳しくはこちらをご覧ください。
保税倉庫とは?搬入から出荷までの流れやメリット・デメリットを紹介
保税工場
保税工場は、外国貨物の加工や外国貨物を原料とした製品の製造ができる施設で、税関長の許可によって設置されます。材料を海外から輸入して、保税工場での蔵置期間中に製品を作れば、関税をかけずに輸出が可能です。
製造される品はさまざまで、たとえば魚の缶詰(海外で捕れた魚も輸入品扱い)、船舶、自動車、石油製品などがあります。
材料や製品の輸送に便利な港湾部に立地していることがほとんどですが、国内用と海外用の製品を一括製造している場合、内陸部に保税工場が設置されるケースもあります。
保税展示場
保税展示場は、外国貨物の展示を行う会場として税関長が認可した場所を指します。この認可は、イベントの開催期間を考慮して「税関長が必要と認める期間のみ有効」です。
たとえ期間限定の展示でも、国内に展示品や資材を持ち込む際には税関を通さなければなりません。
ただし、保税展示場の許可を受けている会場なら外国貨物のまま持ち込めるため、関税や煩雑な手続きの負担を軽減することが可能です。
実例としては、東京モーターショーや万博など国際的な展示会、美術館で海外の美術品を借用して展示する場合などが挙げられます。
総合保税地域
総合保税地域は、保税蔵置場・保税工場・保税展示場を総合した機能を持つと税関長が認めた場所のことです。
総合保税地域は保税地域の集積によるメリットをさらに促進するために作られた制度で、この地域においては、外国貨物を各施設間で輸送する際に手続きが必要ありません。
愛知県常滑市にある中部国際空港セントレアは国内空港で唯一の総合保税地域で、空港敷地内には愛知県国際展示場などの施設があります。
保税地域の場所一覧
税関のサイトから保税地域のリスト一覧をダウンロードできます。設置場所の確認にお役立てください。
指定保税地域は税関手続きの主要地点となるため港や空港に設置されていますが、保税蔵置場と保税工場は貨物の用途・運送先などにより、港や空港から離れた場所に立地しているケースもあります。
浜松委托運送株式会社つつみ流通センターも、内陸保税蔵置場の一つです。港湾部より混み合いにくく、スムーズに税関手続きできる点がメリットと言えます。
保税地域での輸出入通関の流れ
指定保税地域と保税蔵置場では、外国貨物の積卸し、税関の手続きなどが行われます。
ここでは港での輸出入を例に、保税地域内で輸入通関と輸出通関がどのような手順で進められているのか見ていきましょう。
輸入通関の流れ
輸入申告は外国貨物が保税地域に入るまではできないため、外国貨物が船や航空機で運ばれてきてまず、荷卸しと保税地域への搬入が行われます。
外国貨物を保税地域に入れて輸入申告を済ませたのち、税関の審査や検査に移るという流れです。
税関の審査後に関税などを納付し、税関長から輸入許可証が発行されると、外国貨物を内国貨物として引き取ることができます。
貨物が到着してから輸入許可が下りるまでの所要期間は、2~3日程度を見ておきましょう。
輸出通関の流れ
輸出の場合、通関を行うにあたってまず輸出申告と保税地域への搬入手続きが必要になります。この時点では、輸出する貨物は内国貨物という扱いです。
輸出申告書の審査、さらにトラックなどで保税地域へ搬入された貨物の検査を税関が行い、問題がなければ税関長から輸出が許可されます。
ここで貨物は外国貨物扱いとなり、保税地域から搬出後、船や航空機で輸出されていくのが一般的です。
輸出の通関手続きが完了するまでには、およそ3~5日かかるでしょう。
まとめ
今回は保税制度の基本知識やその種類、通関作業の流れについて紹介しました。
国の監督下に置かれた保税地域があることで通関作業は正しく、機能的に行われます。それに加え、保税工場や保税展示場のような存在が貿易を活性化させる役割を担っていることもわかりました。
浜松委托運送株式会社つつみ流通センターでは、保税地域の港倉庫を完備している強みを活かして、ワインやアパレル品などの輸入品を安全に運送、保管、流通加工が可能です。
輸入ビジネスをご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
この記事は執筆された時点での情報を元に記載されております。文書・写真・イラスト・リンク等の情報については、慎重に管理しておりますが、閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。記載内容や権利(写真・イラスト)に関するお問合せ等はこちら