「物流業」という言葉について、その定義をきちんと説明できる人は少ないのではないでしょうか。
商品が消費者に届くまでの一連の工程を「物流」といい、物流を担う事業を「物流業」といいます。物流業は、商品の輸送だけではなく、保管や荷役など多くの役割を担っているのが特徴です。
この記事では、私たちの生活に必要不可欠な物流業の概要と役割、課題と解決方法について解説します。
物流業について理解を深めれば、物流を自社で行うべきか、あるいはアウトソーシングするべきかを判断する材料になるでしょう。また、物流全体を効率化させ、現在抱えている課題を解決する策を見出せるかもしれません。
■この記事でわかること
- 物流業の概要
- 物流業の役割
- 物流業の課題と解決方法
目次
物流業とは
物流業は、メーカーや生産者が製造した商品を、消費者の手に届けるまでの工程を担っています。商品を運ぶのはもちろん、保管、荷役、包装、流通加工、情報管理などの業務も含まれ、求められる役割が非常に広いのが特徴です。
たとえば、商品の保管には、適切な温度管理や湿度管理など、品質を損なわずに保管する方法や環境づくりが求められます。
また、急な注文にも対応できるよう、日頃から適正な在庫管理と効率的な配送計画を実施し、迅速かつ正確に商品を輸送できるしくみを整えなければなりません。
なお、物流は「物的流通」の略語であり、流通についても併せて知っておくと、物流業をより深く理解できます。流通については以下のページで解説していますので、ぜひ参考にしてください。
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物流業には、商品を運ぶほかにも、保管や荷役、包装といった機能があります。各機能の詳細がわかれば、物流業がどのような仕事なのかより深く理解できるはずです。
物流業の6つの機能
物流には、次の6つの機能があります。また、工程や目的により、5つの領域に分けることができます。物流の効率化には、それぞれの機能と領域のシームレスな運営がポイントとなります。
機能 | 具体的な業務 |
配送・輸送 | 生産者から消費者へ車両や船舶、航空機を使って商品を届ける |
保管 | 消費者の需要に合わせて在庫を管理し、必要なときに迅速に供給する |
荷役 | 車両や船舶、航空機へ貨物を積み込んだり、積み下ろしたりする。ピッキングや仕分けなども含まれる |
梱包・包装 | 商品の梱包と包装を適切に行い、輸送中の損傷を防ぐ |
流通加工 | ギフト用の包装、商品の小分け作業、同梱作業などを行う |
情報システム | 倉庫管理システム「WMS(Warehouse Management System)」等を利用して物品の流れをコントロールする |
配送・輸送
物流業界では、配送と輸送は厳密には違う意味で使われます。「配送」は主に、近距離あるいは小口で荷物を届ける場合を指します。一方、長距離で大量の荷物を運ぶ場合に用いられるのが「輸送」です。
配送・輸送のプロセスは、商品の運送だけでなく、ルートの最適化、配達スケジュールの管理、追跡、顧客対応など、さまざまな要素から成り立っています。物流にかかるコストのうち6割程度を占めるといわれており、非常に重要な要素といえるでしょう。
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保管
倉庫などで、商品や原材料を一時的に預かる機能が保管です。商品や原材料の品質を損なわずに保管するには、倉庫内の温度や湿度を適切にコントロールできる環境づくりが重要です。
また、需要と供給のバランスを取るうえでも大切な工程といえます。保管している在庫を適切に管理し、需要のあるタイミングで迅速に出荷できれば、売り上げアップやブランド力の強化が期待できます。
保管は物流にかかるコストのうち1~2割程度を占め、配送・輸送に次いで重要な要素といえます。
荷役
荷役とは、商品の搬入・搬出にまつわる作業をいいます。トラックなどに商品を積み込んだり、積み下ろしたりする作業のほか、倉庫への入庫や倉庫からの出荷、輸出入貨物のバンニング(コンテナへの積み込み)、デバンニング(コンテナからの積み下ろし)なども含まれます。
荷役を効率化できれば、物流にかかる時間と労力を節約でき、物流コストの削減につながるでしょう。
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梱包・包装
梱包・包装は、商品を輸送中の損傷から保護するために行われます。商品が損傷する原因としては、衝撃、振動、湿度、温度変化、気候条件、異物の混入などがあります。
商品の損傷を防ぐには、商品に合わせて梱包材や緩衝材を選ぶことが重要です。また、梱包時に余分な空間ができないようにしたり、資材を過剰に使わないようにしたりすると、物流コストを削減できます。
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流通加工
流通加工は、商品の出荷前に行われる加工のことです。袋詰めやギフト用のラッピング、値札やラベル貼り、断裁など、さまざまな作業があります。
店舗や工場で行われるケースもありますが、物流業者にアウトソーシングするのも一つの方法です。信頼できる物流業者に依頼できれば、流通加工に割いていた人材やコストを本来の業務に回せます。
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情報システム
商品の在庫や受発注の管理、輸送や配送の手配等を効率的に行う役割を持つのが情報システムです。例えば、倉庫業務に倉庫管理システム(WMS)を活用すれば、倉庫内の商品の受け入れ、保管、ピッキング、パッキング、出庫などのタスクを一元管理できます。
情報システムの導入は、倉庫作業の最適化と正確性の向上に欠かせません。
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WMSとは?物流倉庫に導入する際の基礎知識を徹底解説物流業と運輸業の違い
物流業と混同されがちな業種に運輸業があります。
運輸業は、トラックや船舶などで荷物を運ぶことが主な事業です。運輸業のみを行う会社も珍しくなく、単純に「運送業」と表している場合は、商品の保管や梱包・包装、流通加工などは行っていないと考えてよいでしょう。
一方、物流業においては、運輸業は物流の一工程という位置づけになります。
なお、国の統計調査などに用いられる「日本標準産業分類」には、物流業という業種はありません。同分類では、「運輸業、郵便業」という大分類の下に、「鉄道業」「道路貨物運送業」「倉庫業」などの中分類が設けられています。
東京証券取引所の業種分類でも物流業という業種はなく、「運輸・情報通信業」という大分類の下に、「陸運業」「海運業」「倉庫・運輸関連業」などの中分類が設けられています。
物流業の課題と解決策
物流の機能は多岐にわたり、市場規模も拡大していますが、一方で現場や業界全体にはいくつかの課題があります。ここでは物流業の課題とその解決策を紹介します。
2024年問題に伴う人材不足
2024年4月から働き方改革関連法の改正が適用され、ドライバーの時間外労働の上限が厳しく規制されます。これに伴って起きるとされる物流業のさまざまな問題を「2024年問題」といいます。
人材不足は、2024年問題の重要なテーマの一つです。道路貨物運送業における就業者の高齢化や、収入減少などを背景に、トラック等のドライバー不足が懸念されています。このうえ、ドライバーの時間外労働が厳しく規制されれば運べる荷物量が減り、物流が停滞しかねません。
人材不足、時間外労働規制による売り上げの減少、そして後述の燃料価格の高騰などによって、倒産する物流企業が増加することも予想されます。
人材不足を起因とした物流の停滞を防ぐには、労働条件の改善や待遇の見直しのほか、デジタルトランスフォーメーション(DX)が必要です。DXの導入によって業務の効率化や自動化が進めば、限られた人材で最大限の効率を発揮できるでしょう。
物流における2024年問題については、こちらのページでも紹介しています。併せてお読みください。
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物流業界の2024年問題とは?想定される問題と必要な対策を解説燃料価格の高騰
近年、インフレや円安なども相まって燃料価格が上昇しています。これは物流業にとっては深刻な問題です。
特に、多くの燃料を必要とするトラック業界においては、燃料価格の上昇は業務コストの増大に直結します。全日本トラック協会は、燃料価格がわずか1円上昇するだけで、トラック業界全体で150億円以上の負担が増加すると説明しています。
そんななか、注目を集めているのがモーダルシフトです。モーダルシフトとは、トラック等の自動車の代わりに鉄道や船舶を利用する輸送方法のこと。環境負荷の軽減につながることもあり、モーダルシフトに移行する企業も増えつつあります。
浜松委托運送では、モーダルシフトを含めたさまざまな取り組みで、燃料価格の高騰に対応しています。
物流波動の存在
物流波動とは、商品需要の変動のことです。物流波動はさまざまな要因で起こります。たとえば、特定の商品がSNSやテレビで話題になり、急激な需要増加が起きることがあります。
また、夏季にはアイスクリームや冷たい飲料の需要が増加し、冬季には暖房機器や防寒服の需要が増えるなど、季節的な要因によっても需要は変動するものです。
こうした物流波動に対応するには、短期間で多くの商品を処理・出荷できる体制づくりが欠かせません。適正な在庫管理や効率的な荷役プロセス、スタッフの適切な配置などにより予測不能な変動にも迅速に対応できれば、顧客の要求を満たすことができ、信頼度も上がるでしょう。
浜松委托運送では独自に開発したWMSを導入しており、物流波動にも柔軟に対応し、品質の高いサービスを提供しています。
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物流業界の現状が抱える課題と解決策まとめ
物流業とは、商品を消費者のもとに届ける事業をいいます。単にものを運ぶだけでなく、商品の配送、保管、梱包、流通加工など、さまざまな工程があります。
物流業務の効率化を目指すなら、まずは、物流についての理解を深めることが大切です。物流業務について知れば、近年話題となっている2024年問題への対策も講じやすくなるでしょう。
なお、物流業務は自社でまかなうこともできますが、信頼できる会社に委託するという選択肢もあります。
浜松委托運送では、独自開発のWMSの導入や入出庫の効率化、モーダルシフト等を通じて、物流業界の課題解決に積極的に取り組んでいます。物流に関する課題やお悩みがあれば、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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