輸送機器へ荷物を積み下ろしする荷役は、物流業界において重要な工程です。荷役作業を効率的に行うことができれば、物流全体の効率化にもつながります。
しかし、荷役作業は重い荷物や機械を扱うことから、事故のリスクも高い作業です。荷役作業の事故を防ぐには、荷役について正しく理解し、適切に対策をしましょう。
ここでは荷役の意味や使用される機械の種類、荷役作業の安全対策について紹介します。
■この記事でわかること
- 荷役の意味や荷役作業との違い
- 荷役で使用される機械の種類
- 荷役作業の安全対策方法
目次
荷役とは
荷役とは、荷物の運搬や積み下ろしを含む入庫から出庫までの一連の流れです。ここでは、荷役の意味や、荷役業務の流れ、荷役機械の種類などを見ていきましょう。
荷役の意味
荷役(にやく・にえき)とは、トラックや船、航空機などの輸送機器への貨物の積み込みや、荷下ろし、倉庫業務などを指します。この作業は、貨物の安全な移動や適切に保管するために不可欠な要素です。
物流のスムーズな流れを構築するには、荷役する際の効率化と安全性の確保が重要です。荷役貨物の取り扱いの質と効率を上げるためには、専門知識と技術が求められます。
一方、運送(輸送)は、荷役の前の工程である「運ぶ手段」を指します。
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荷役業務とは
荷役業務とは、貨物をトラックから取り出してから、注文を受けて出庫するまでの一連の作業を指します。
下記の表は荷役の項目とそれぞれの内容の一覧です。
項目 | 内容 |
積み下ろし | 貨物をトラックから取り出し、地上に配置する作業 |
運搬 | 積み降ろした貨物を、人力、もしくはフォークリフトやクレーンなどの運搬機などの荷役機器を用いて移動させる |
積み付け | 貨物を輸送機器やコンテナに配置し、安全かつ効率的に固定する |
入庫 | 倉庫などの保管場所に貨物を配置する作業 貨物の種類や需要に応じて、適切な位置に保管する |
格納 | 貨物を特定の位置に保管するために整理し、適切に配置する |
仕分け | 複数の貨物を種類や行き先に応じて分類する |
ピッキング | 倉庫内で必要な貨物を選び出す作業。通常、顧客の注文に応じて行われる。 |
荷揃え | 複数の貨物を一つの輸送機器やコンテナに均等に配置する |
出庫 | 倉庫などから貨物を取り出し、トラックに積み込み、顧客への配送や出荷のために必要な手続きを行う |
荷役機械の種類
荷役には手荷役だけでなく、クレーンやフォークリフトなどの機械も使用します。ここでは荷役機械の種類を紹介します。
クレーン類
物流倉庫におけるクレーンの役割は、重い貨物や荷物を効率的に移動・取り扱うことです。これにより、人力だけでは難しい大型の貨物や重い荷物の取り扱いを行い、効率性や安全性を高めます。それぞれのクレーンの種類と特徴は以下の通りです。
1. 天井クレーン
天井クレーンは、倉庫内の天井に設置されたレールを通じて動作するクレーンです。主に大型の荷物や貨物を高い位置から効率的に移動・取り扱うのに使用されます。
2. ジブクレーン
ジブクレーンは、垂直に立てられた支柱に取り付けられたアーム(ジブ)を用いて、荷物を持ち上げるためのクレーンです。主に特定の場所への荷物の吊り上げや移動に使用されます。
3. アンローダ
アンローダは、トラックや船舶などの輸送機器から貨物を取り出すための装置です。大量の貨物を素早く取り出すことができ、倉庫内での荷役を効率的に行います。
コンベヤ類
コンベヤは、貨物や荷物を自動的に運搬する装置で、効率化や作業者の負担を軽減する役割があります。コンベヤの種類と特徴は下記の通りです。
1. ベルトコンベヤ
ベルトコンベヤは、ベルト状のコンベヤベルトを回転させることによって、荷物や貨物を運搬する装置です。直線やカーブに沿って運搬することができ、倉庫内での荷物の移動に広く使用されます。
2. ローラーコンベヤ
ローラーが回転することによって、貨物を運搬する装置です。物流倉庫内での重い荷物や大型の貨物の移動に使用され、一定の距離を効率的に運搬します。
3. チェーンコンベヤ
連結されたチェーンを回転させることによって、重い荷物や貨物を運搬する装置です。主に大型の荷物や製品の運搬に使用され、倉庫内の流れ作業に適しています。
4. スクリューコンベヤ
スクリューコンベヤは、螺旋状のスクリューが回転することによって、粉状の物質や液体を運搬する装置です。倉庫内での特定の物質の移動や供給に使用されます。
フォークリフト
フォークリフトは、トラックやコンテナから荷物を降ろし、倉庫に運ぶ入庫だけでなく、倉庫から荷物を取り出し、トラックやコンテナに積み込む出庫にも使用されます。
物流業界では、さまざまな種類のフォークリフトが使用されています。代表的なフォークリフトのタイプは下記の通りです。
・カウンターバランスフォークリフト
物流業界で最も一般的に使用されるフォークリフトのタイプです。倉庫内でパレットやコンテナを移動し、積み替えるのに適しています。
・リーチフォークリフト
倉庫や配送センターなどで高い棚から商品をピッキングしたり、商品を保管したりするために使用されます。高所作業能力が求められる場面で重宝されます。
・オーダーピッキングトラック
インターネットの普及に伴い、オンライン小売業での需要が増加しており、オーダーピッキングトラックは商品のピッキングと組み立てに特化しています。
・サイドフォークリフト
長尺物品や特殊な形状の商品を運搬する際に使用されます。鋼材、パイプ、木材などの長物の移動に適しています。
・マルチディレクショナルフォークリフト
狭い通路での機動性が求められる倉庫で使用されます。棚から棚へのアクセスが容易で、倉庫内のスペース効率を高めます。
・ウォーキーフォークリフト
小規模な倉庫や店舗内での移動と荷役作業に適しており、狭いスペースでの操作が可能です。
マテハン(マテリアルハンドリング)
マテハン(マテリアルハンドリング)とは、荷役に関する作業全般のことを指します。また、マテリアルハンドリングに用いる機械そのものを指して、マテハンと呼ぶ場合もあります。
作業としてのマテハンは、物流倉庫や製造施設におけるモノの運搬を指すことが一般的です。具体的には倉庫内での荷物の仕分けやピッキング作業、生産ライン内での部品の供給などが該当します。省人、省力、品質向上といった、業務効率化を目的とした文脈で用いることが多いでしょう。
機械を指す場合のマテハンには、下表のようなものが挙げられます。それぞれの詳細と併せて見てみましょう。
機械の種類 | 詳細 |
パレタイザ | 製品や荷物をパレットに積み重ねる作業を自動化するための装置 |
ソーター | 流センターや配送センターで使用される装置で、異なるルートに荷物を分類して導く役割を果たす |
AGV | 自動誘導車とも呼ばれ、工場内や倉庫などで物品を自動的に運搬するために使用される無人車両 |
荷役作業の安全対策
荷役は物流において欠かせない工程ですが、重い荷物や機械を取り扱うため、ケガや事故のリスクに考慮する必要があります。ここでは荷役作業の事故件数や安全対策について解説します。
荷役作業の事故件数
荷役作業は、貨物の積み下ろしや運搬、保管等を行う性質上、事故が発生する可能性が高い作業です。実際に、陸運業の労働災害の約65%が荷役作業時に発生しています。
安全対策や作業環境の改善などが進められていることから、令和2年の荷役作業の死亡事故件数は、87人と過去最少でした。死亡災害は令和2年から3年にかけてわずかに増えましたが、全体で見れば減少傾向にあります。しかし、休業4日以上の死傷者件数に関しては、平成29年と比較すると約10%増加しています。
事故の件数を減らすためには、事故の種類や原因を分析し、事故防止に向けた取り組みを行う必要があるでしょう。
陸上貨物運送業における荷役作業の安全対策に関する検討会 報告書|貨物運送事業労働災害防止協会>>
荷役作業の災害防止に向けた取り組み
荷役作業の災害防止に向けた取り組みとして、厚生労働省から「陸上貨物輸送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン」として荷役作業の安全対策が示されています。ガイドラインの内容は主に以下の項目により構成されています。
- 安全衛生管理体制の確立等
- 荷役作業における労働災害防止措置
- 荷役作業の安全衛生教育の実施
- 陸上貨物運送事業者と荷主等との連絡調整
- 自動車運転者に荷役作業を行わせる場合の措置
- 陸上貨物運送事業者間で業務請負等を行う場合の措置
ガイドラインに記載された取り組みを通して、死亡事故は年々減少しています。
陸上貨物輸送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン|厚生労働省 >>
浜松委托運送でも安全対策に取り組んでおり、以下のような取り組みを行なっています。下記の項目をベースに、各工程におけるマニュアルの策定やシステム活用なども、事業者様ごとに細かく管理しています。
- 事故防止のためのヒヤリハット教育
- 現場ごとに作業内容のマニュアル化
- 毎月の自己対策会議の実施
- 5Sの徹底
- 毎日の点呼時における注意事項の喚起
まとめ
荷役は物流において欠かせない工程ですが、陸運業の事故の65%は荷役中に発生していることから、事故のリスクが高い業務といえます。そのため、物流では各段階で効率化と共に安全対策が求められるでしょう。
物流に関するリスクを回避するには、専門の業者にアウトソーシングすることも有効です。浜松委托運送では荷役を含めた物流全体の工程を取り扱っています。荷役のリスクや手間を軽減したいと考えている方は、まずは浜松委托運送へお問い合わせ下さい。
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