物流業務において、ABC分析が有効だと聞いたことがあるかもしれません。しかし、必要性や算出方法、手段が分からない人もいるでしょう。
本記事では、ABC分析を物流業務で利用するメリットや手法などを解説します。分析方法や注意点も紹介しているので、ぜひご覧ください。
■この記事でわかること
- ABC分析の意味や、物流ABCとの違いがわかる
- 物流業界でABC分析を活用するメリットがわかる
- ABC分析の算出方法がわかる
目次
物流におけるABC分析とは?
ABC分析とは指標を定めて優先度を決める分析手法の一つで、パレートの法則が基になっています。物流でABC分析を取り入れるケースや、物流ABCとの違いを解説します。
ABC分析とは
ABC分析とは売上やコスト、在庫などの評価軸を定めて、多い順にA・B・Cのグループに分類して優先度を決める方法です。「全体の売上の大部分は、一部の商品が生み出している」という概念が基になっており、80:20の法則とも呼ばれます。
物流業界では在庫管理の適正化や、ロケーションを考える際に用いられるケースが多いでしょう。ABC分析をうまく活用できれば、利益率や作業効率の向上も期待できます。
物流ABCとの違い
物流ABCは各作業の原価を把握することが目的です。ABCとは「Activity Based Costing」の略で、日本語では「活動基準原価計算」と訳されます。物流ABCは業務の効率化や適切な人員配置のために活用されるケースが多く、コストカットにも効果的です。
ABC分析は物流ABCと似たような言葉ですが、在庫管理を行う際に用いられる手法のため、分析する対象が異なります。
物流のABC分析を行うメリット
物流においてABC分析を行うメリットは下記の通りです。
- 現状の可視化
- 施策の効果測定がしやすくなる
- 出荷作業の効率化
それぞれ解説します。
現状の可視化
物流のABC分析は売れ筋とそうでない商品を可視化できるので、在庫を適正化する際に役立ちます。たとえば、売上への貢献度が高いAグループの商品は切らさないように在庫を多めに保つ必要があります。一方、Cグループの商品は、見直しや撤退を検討する際の判断材料となるでしょう。
売上以外にもコストや数量、在庫などのデータ分析もできるので、多方面から商品の現状確認が可能です。
適正在庫についてはこちらのページでも詳しく解説しています。
合わせて読みたい
施策の効果測定がしやすくなる
物流にABC分析を活用すれば定期的に販売状況をモニタリングできるため、時間軸での比較が容易になります。たとえば、施策した結果のビフォーアフターを可視化できるので、次の施策を立案する際に役立ちます。
1か月ごとの測定も可能なため、季節商品や特定の時期に売れる商品の分析にも有効です。継続して行えば、施した対策の効果測定がしやすくなります。
出荷作業の効率化
物流ABC分析は倉庫での商品の保管場所を決める際にも利用できます。たとえば、Aグループの商品は入庫や出荷が多いため、入口付近に置くと作業効率が上がるでしょう。反対に、Cグループは商品の動きが少ないため、出荷口から離れた場所に配置するのも一つの方法です。
Aグループの商品は導線を短くし、Cグループは導線を長くすると、ピッキング作業の時間を短縮できます。出荷作業を見直す際にもABC分析は有効です。
物流業界のABC分析のやり方
ABC分析のやり方や手順を紹介します。物流業界で活用するポイントも紹介しているので、ご確認ください。
1.必要なデータを準備して計算する
はじめに、分析したい商品の売上金額や販売個数をエクセルなどのデータ上に収集して、売上金額の多い順に並べましょう。集めた数値をグループ分けをするには、以下の2つの操作を行います。
- 構成比を計算
- 累計構成比を算出
まずは、各商品が全体のどのくらいの割合を占めるのか、売上構成比を計算します。売上構成比は、対象商品の売上金額を全体の売上金額で割った数字です。売上金額の多い商品から構成比を合算していくと、累計構成比が算出できます。
2.グループ分けを行いパレート図を作成する
集めたデータを以下の表を基準に、商品を3つのグループに分類します。売上金額以外にも、販売数や粗利額など目的に応じて分析が可能です。
グループ | 分類基準 |
A | 売上7割から9割までの商品 |
B | 売上7割までの商品 |
C | 残りの商品 |
A・B・Cにグループ分けができたら、分析したデータをもとにパレート図を作成します。パレート図とは、分類した内容をもとに、棒グラフと折れ線グラフで示したものです。
パレート図を作成すると各商品がどの程度の割合を占めているかが一目でわかり、原因や問題点の絞り込みに有効です。エクセルを使用すると、グラフ機能にパレート図が用意されているので作成しやすいでしょう。
3.分析した結果をもとに改善施策を考える
ABC分析の結果をもとに、在庫管理やレイアウトなどの改善に取り組みましょう。
Aグループの商品はよく出荷されるため、受注したらすぐに対応できる体制を整える必要があります。たとえば、入口や出荷口の手前エリアに配置するのが効果的です。
一方、Cグループは出荷頻度が低いため、リフトでしか取れない位置に移動させることも検討します。もしくは、在庫管理の対象から外すことを検討してもよいでしょう。出荷頻度に合わせてアイテムを配置すると、作業効率が改善します。
物流業務においてABC分析を行う場合の注意点
ABC分析は商品の重要度の把握や、物流業務の改善に効果的です。しかし、一時的な要因を考慮せずに、データだけを鵜呑みにするのは危険です。物流業務でABC分析を行う場合の注意点を紹介します。
一過性の影響を加味する
商品の売上は特需やトレンドの影響を受けやすいため、外的要因がないかも確認しましょう。Aグループのなかには、一過性の要因で一時的に売上が伸びた商品が含まれていることもあります。その場合、時間が経過すると売れ行きが悪くなり、ランクが下がるかもしれません。多めに発注すれば、過剰在庫となるでしょう。
一方、ランクやの低い季節限定商品や集客用商品であっても、販売戦略では重要なケースも考えられます。ランクの低さだけで判断せず、商品の状況を分析することが大切です。また、ABC分析は一時的に行うのではなく、継続的に分析・管理しましょう。
浜松委托運送では、物流倉庫管理システム上のABC分析によって出荷状況を把握しています。そのため、より早く、かつ正確な物流作業を実現可能です。また、定期的に売上を解析して分析結果の修正を行なっています。
Cグループを軽視しない
以下の特徴に当てはまる商品は、Cグループに該当していても、無理に販売を停止する必要はありません。
- 1年を通して安定して売上を上げられる
- 集客に効果的
- Aグループの商品に関連するアイテム
販売数量が少ない商品でも種類を増やすと、合計したときに売上の多くを占める現象をロングテールの法則といいます。ロングテールの法則を利用して、Eコマースでは売れ数が少なくても、あえて種類を取りそろえて顧客を引きつける戦略があります。
一部のマニアや愛好家に好まれる商品が揃っていると、希少性の高さから支持されるかもしれません。特に実店舗よりも在庫コストの負担が少ないECサイトでは、ロングテールの法則を取り入れやすいでしょう。
まとめ
ABC分析とは、データを収集して構成比を算出し、3つのグループに分ける手法です。重要度の高い商品が可視化しやすく、現状を把握するときに有効です。物流でABC分析を活用すると、現状の把握や施策の効果測定、出荷作業を見直したいときに役立ちます。
浜松委托運送ではABC分析を利用して管理を行なっているため、より効率的な物流システムの構築が可能です。自社システムを利用した出荷作業やスキャナーを利用した徹底的な検品対応などにより、高品質で生産性の高い効率的なロジスティクスを実現しています。
今回ご紹介した在庫管理や物流業務に関して気になる方は、こちらのページもチェックしてみてください。
在庫管理が気になる方はこちら
浜松委托運送の在庫管理について詳しく見てみるこの記事は執筆された時点での情報を元に記載されております。文書・写真・イラスト・リンク等の情報については、慎重に管理しておりますが、閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。記載内容や権利(写真・イラスト)に関するお問合せ等はこちら