棚卸しは企業が保有する資産の在庫数を数える作業です。また、企業の利益を正確に把握するためにも棚卸しが行われます。
しかし、棚卸しの頻度は、企業によって異なるため、棚卸しを何のために行うのか目的を理解しておらず、あいまいなまま作業を進めている場合もあるかもしれません。
棚卸しの目的を理解したうえで行うと在庫数の正確な把握と利益の計算を正しく行うことができます。
この記事では棚卸しの作業内容や種類、作業のポイントを解説します。棚卸しの目的を知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
■この記事でわかること
- 棚卸しの概要
- 棚卸しを行う目的
- 棚卸しのポイント・注意点
目次
棚卸しとは
棚卸しとは、企業が所有する商品や資材の在庫数を数え、状況を把握する作業です。たとえば、販売商品やオフィスの消耗品など、事業運営に使用する資産の数量を確認します。ここでは棚卸しの対象や帳簿棚卸と実地棚卸の違いを紹介します。
棚卸しの対象となるもの
棚卸しの対象は下記のように多岐にわたります。いずれも在庫として現物が確認できる資産が対象です。
- 販売する商品・製品
- 半製品(まだ最終的な形に仕上げられていない製品)
- 仕掛品(製造途中の未完成の製品)
- 原材料(主要原材料・補助原材料)
- 消耗品(貯蔵中のもの)
また、オフィスで使用している事務用品など、企業が所有する消耗品なども棚卸しの対象に含まれます。そのため商品を販売しない事業者も棚卸が必要です。
棚卸しを行う時期と頻度
棚卸しの時期と頻度は、在庫の状況や対象によってさまざまです。しかし、最低でも年に1回は実施しなくてはなりません。
なぜなら、決算で棚卸資産の残高を把握する必要があるからです。そのため、年に1回棚卸を行う場合は、期末のタイミングでの実施が一般的です。
一方で、企業によっては四半期ごとに棚卸しを行う場合もあります。特に飲食店や小売業、工場など、在庫を多く抱える事業の場合は、月に1回のペースで棚卸しを行うことも珍しくありません。
棚卸を頻繁に行うと、在庫数を正確に管理でき、帳簿と実在庫のずれを防げるメリットがあります。
帳簿棚卸と実地棚卸の違い
棚卸しには、帳簿棚卸と実地棚卸の2種類があります。ここではそれぞれの違いを紹介します。
帳簿棚卸
帳簿棚卸とは、帳簿上で在庫数を確認する棚卸し業務です。在庫の入出庫があった際に、それらの変動を帳簿に記録し、在庫管理表などを用いて在庫数や評価額を計算します。
また、会社の利益を把握し決算書を作成するためにも行われます。
帳簿棚卸は、帳簿上の在庫情報を元に在庫の状況を把握するため、実地棚卸と比べて比較的短時間で実施できます。しかし、簡易的な在庫確認となるため、実際の在庫数を確認するためには実地棚卸も必要です。
実地棚卸
実地棚卸とは、実際に在庫を数えて行う棚卸し作業です。従業員や担当者が商品や資産を手動で数えます。実地棚卸は、帳簿棚卸と比べると時間がかかりますが、より正確な在庫数を確認できます。
実地棚卸の在庫数は、帳簿棚卸の在庫数よりも正しい数となるため、帳簿棚卸と実地棚卸の数字が合わない場合は、帳簿棚卸を実地棚卸に合わせて数を調整します。
また、実地棚卸の実施は法律で定められた義務となります。前述の通り棚卸の対象にはオフィスの消耗品なども含まれることから、販売商品を持たない企業も実施棚卸が必要です。
消耗品については、毎期おおむね一定量を購入し、経常的に消費するものについては棚卸の必要はありません。一方、「コピー用紙の値上がり通知を受けたため、値上がり前に2年分をまとめて購入した」のような場合は貯蔵品(資産)として扱われるため、実地棚卸の対象となります。
企業によっては在庫の確認と併せて品質チェックを行う場合もあります。在庫の数や事業の規模によっては数日掛けて棚卸しを行うケースもあるでしょう。
棚卸しを行う目的
棚卸しは利益を把握することも目的として行われます。また、商品の状態確認や帳簿との照合にも棚卸し作業が欠かせません。棚卸しを行う目的は下記の通りです。
利益を正確に把握するため
在庫数が把握できなければ、正確な利益の計算ができません。また、仕入れた商品が当期中に完売しない場合も考えられるでしょう。利益を正確に把握するためには、棚卸しを行い実際の在庫数を確認したうえで、売上とコストを照らし合わせて計算する必要があります。
会社の売上高や利益を産出するために、会計年度中の「売上原価」を確定する必要があります。仕入れた商品の内、当期中に販売されなかった分の仕入原価は、当期の売上原価には含まれません。そのため、期末には必ず在庫数の確認をする必要があるのです。
また、商品の中には不良在庫が含まれている可能性もあります。不良在庫は帳簿だけでは確認できないため、販売可能な在庫数を正確に把握するためにも棚卸しは必要です。
帳簿と実在庫の照合のため
帳簿と実在庫の照合は、正確な在庫管理のために重要です。商品の入出庫の都度、在庫管理表に記録すれば、帳簿上は在庫数を管理できるでしょう。
しかし、盗難、紛失、販売時の誤りなどにより、実際の在庫数と帳簿上の数字が一致しないこともあります。
帳簿上の在庫数と実地棚卸の差を棚卸減耗と呼びます。棚卸減耗は、正確な在庫情報を把握するために重要な項目です。
たとえば、100個仕入れた商品を60個販売し、帳簿上の在庫が40個に減っているとします。その際に、実際の在庫が38個だった場合は、その差分の2個が棚卸減耗として扱われます。
商品状態の確認のため
棚卸しは、商品や製品の状態を確認するためにも不可欠です。仕入れた商品が売れ残った場合、長期間の保管による品質の低下が考えられます。商品の品質が劣化すれば、資産の価値が下がり、売り物にならない商品も発生するでしょう。
また、食品の賞味期限切れによって廃棄が発生する損失は、棚卸資産評価損として計上されます。
棚卸しにより、商品の状態を確認できれば、品質が低下する恐れのある商品を早めに見つけることができます。商品の価値を維持し、損失を最小限に抑えるためにも、棚卸しは重要な作業です。
品質や価値が下がりそうな商品の在庫量を早く把握することで、値引き販売などを行うことによって損失の最小化につなげることができます。
機会損失の防止のため
棚卸しは機会損失を防ぐ重要な手段です。棚卸しを怠ると、商品の在庫状況を把握できず、顧客が購入しようと思ったタイミングで在庫が不足して販売できなくなる可能性があります。このような状況は売上機会の損失につながります。
さらに、商品の劣化や破損によって、そもそも販売自体ができないケースも考えられるでしょう。そのため、棚卸しによって正確な商品状態を把握することが重要です。
棚卸し業務の基本的な流れ
棚卸し業務は、以下の基本的な流れに従って行われます。
- 棚卸しの事前準備
- 在庫のカウント
- システムへ入力
- 帳簿との照合・修正
- 棚卸資産の評価
1.棚卸しの事前準備
最初に責任者や担当者を決め、棚卸しのスケジュールを立てます。必要に応じて事前にマニュアルを作成し、作業手順やルールを明確にすると作業効率を高められます。
2.在庫のカウント
担当者は倉庫や保管場所に保管された在庫を数えます。
3.システムへの入力(在庫管理システムを導入している場合)
数えた在庫データを在庫管理システムに入力します。これにより、リアルタイムで在庫状況を確認できるようになります。
4.帳簿との照合・修正
帳簿棚卸と実地棚卸の数字を比較し、一致しない場合は修正を行ってください。
5.棚卸資産の評価
棚卸しの結果をもとに、棚卸資産の評価を行います。これにより、正確な在庫価値を把握し、会計処理や報告書作成に利用します。
棚卸し業務の具体的なやり方は下記のページでも紹介しているため、こちらも参考にしてみてください。
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棚卸しのやり方は?スムーズに行うポイントを解説棚卸しのポイント・注意点
棚卸しを素早く正確に行うためには、事前の準備が大切です。また、ヒューマンエラーを減らすために、ダブルチェックの実施など社内の体制を整えましょう。ここでは棚卸しのポイントと注意点を紹介します。
実地棚卸に向けて事前に準備を整える
実地棚卸しを効率的に進めるためには、事前の入念な準備が欠かせません。実地棚卸に向けた準備として、主に下記の3つがあげられます。
- 責任者や担当者の設定
実地卸までには、作業の責任者を決め、担当者の設定や責任範囲を明確にすると、作業者同士で連携が取りやすくなり、効率的に作業を進められます。
- マニュアルの準備
マニュアルの内容は、未経験の作業者やパートタイムのスタッフも理解できる内容にすると、作業者全員が同じ手順で荷下ろしを進められます。そのためには、倉庫内ロケーションや見取り図を記載しておくと確認しやすいでしょう。
- 棚卸表の準備
棚卸し作業時に使用するための棚卸表を事前に用意します。手書きでは時間がかかるため、エクセルなどを使って項目を詳細に設定すると、記入の負担を減らし集計の時間短縮につながります。
ヒューマンエラーをなるべく減らす体制を整える
在庫を数える作業では、ヒューマンエラーが発生する可能性も考慮しましょう。その際は複数人での確認やダブルチェックを行うと、数字の読み間違いや記入ミスを防げます。
ほかにも、数量や商品コードの記入方法をルール化することで、記入ミスを防ぎエラーチェックの工数を削減できます。
また、ミスが起きづらい環境を整えることも大切です。たとえばチェック済みの棚や商品は、識別ができるラベルを貼ると、どの項目が確認済みであるかが一目で分かり、チェック漏れを防ぎます。
作業の問題点を洗い出して改善を続ける
棚卸し中の問題点や棚卸結果を分析することで、今後の改善策を見つけやすくなります。たとえば、帳簿の数量と実際の物理的な在庫数にずれがある場合は、その原因を特定すると、次の棚卸し業務の時間短縮や精度の向上につながるでしょう。
また、実地棚卸しを行った作業者からのフィードバックを積極的に受け入れることで、業務プロセスの改善に活かすことができます。そのためには従業員が問題点を共有しやすい環境づくりも大切です。
在庫管理システムを導入する
在庫管理システムを導入することで、在庫状況がリアルタイムで確認できるようになります。その際にシステムと在庫数にずれが生じた場合は修正も簡単です。
また、在庫の自動集計や分析を行うため、棚卸し業務の時間も短縮できます。手作業で数える手間や時間を削減できれば、作業者は他の重要な業務にも集中しやすいでしょう。
浜松委托運送社では、自社独自の物流管理システムを採用しています。下記の記事では、具体的にどのようなシステムなのかを紹介しているため、こちらも参考にしてみてください。
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浜松委托運送の物流管理システムについて見てみるまとめ
棚卸しは商品や資材といった資産の在庫数を数える作業です。棚卸しの頻度が多ければ、在庫数を正確に把握でき、販売機会の損失を防ぐこともできます。
もし、棚卸しを含む物流業務を自社で抱えることに限界を感じている企業様は、ぜひ物流アウトソーシングをご検討ください。
浜松委托運送は物流システムを導入し、正確かつスピーディな棚卸し業務ができる物流会社です。浜松という立地を活かした低コストでの輸送を実現します。物流業務に課題を抱えている企業様はお気軽にお問い合わせください。
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