棚卸し作業は大きく分けて、「実地棚卸」「帳簿棚卸」の2種類に分けられます。実地棚卸は、実際に保管されている在庫数を数える棚卸し業務です。一方、帳簿棚卸は帳簿上で在庫の管理を行います。
棚卸しのやり方はそれぞれの種類によって異なりますが、いずれも会社が保有する資産や利益を正しく把握するためには欠かせない作業です。しかし、棚卸しは複数人で行うため、全体の手順の認識ずれや混乱が起きるかもしれません。
この記事では棚卸しのやり方を手順ごとに解説します。棚卸し作業をより効率的に行いたい方も参考にしてみてください。
■この記事でわかること
- 実地棚卸の手順
- 帳簿棚卸の手順
- 棚卸し作業を正確にスムーズに行う方法
目次
棚卸しのやり方
棚卸しのやり方は実地棚卸と帳簿棚卸で手順が異なります。ここではそれぞれのやり方を紹介します。
実地棚卸の手順
- 棚卸しの事前準備
- 在庫のカウント
- システムへ入力
- 帳簿との照合・修正
- 棚卸資産の評価
実地棚卸は主に5つの手順に分けられます。詳細な手順は下記の通りです。
1.棚卸しの事前準備
実地棚卸を行う前に棚卸しの責任者を決定します。この責任者は通常、経理や在庫確認部門の担当者が担当するケースが一般的です。
その後は責任者を中心にして、各担当者を選定します。実地棚卸は担当者の数によって作業時間が変わるため、在庫数や作業内容に応じて担当者を適切に割り振りましょう。
また、棚卸しの作業マニュアルや棚卸計画書を作成し、関係者に配布します。その際に在庫の数え方のような基本的な内容から状況別の事例までを記載しておくと、作業者ごとの理解のばらつきを減らせます。
2.在庫のカウント
在庫のカウントは、基本的に担当者が目視で確認します。在庫の確認の方法は、大きく分けてリスト方式とタグ方式の2種類です。ここではそれぞれの方式を紹介します。
【リスト方式のやり方】
事前に自社で作成した在庫リストを使用して実際の在庫数を確認する方法です。このやり方は、在庫リストに記載された数字を見てから、実際に在庫の数を数えるため、時間の短縮が図れます。
ただし、作成した在庫リストに誤った数字が含まれていた場合や重要な項目が抜けていると、確認漏れや誤差が生じやすいでしょう。そのため、事前に在庫リストの内容を確認し、正確なリストを作成することが大切です。
【タグ方式のやり方】
タグ方式は担当者が在庫を確認した後、各商品にタグ(棚札)を貼る方法です。このタグには商品の識別情報や数量が記載されます。
すべての商品にタグを貼り終えたら、タグを回収し、在庫データと照らし合わせを行います。この方法は、商品に直接タグを貼るため、作業の重複や漏れを防ぎやすいことが特徴です。
作業のミスを減らせるメリットがありますが、タグの回収作業には時間がかかる点には注意しましょう。
リスト方式 | タグ方式 | |
メリット | 手間が少ない | カウント漏れを防げる |
デメリット | 重複や漏れを防げる | 時間がかかる |
また、タグ方式やリスト方式以外に、「バーコード方式」も存在します。この方式は、商品に付いたバーコードを読み込むことで在庫確認を行う方法です。特に大量の商品を扱う事業では、コストパフォーマンスが高いことから、バーコード方式を導入する企業も増えています。
3.システムへ入力
すべての作業が完了したら、担当者は棚卸表を回収します。その後は記入した項目をシステムへ入力してください。
棚卸集計表は在庫の数量や評価額などの重要な情報がまとめられている表で、入力されたデータから作成ができます。
4.帳簿との照合・修正
帳簿棚卸の数字と棚卸集計表の数字を照合し、数値に誤差が無いかを確認します。誤差があった場合は、実際に数えたほうの数字が正しいため、棚卸集計表の数字に合わせて修正してください。
この段階での誤差修正は、将来の経営判断や会計報告に影響を与えるため、正確に行いましょう。また、誤差が生じた場合、その原因を特定し記録しておくと、次回の棚卸し作業の改善に役立ちます。
5.棚卸資産の評価
在庫数の確認と集計表との照合が完了したら、棚卸資産の評価を行いましょう。その際は、原価法と低価法で評価を行います。
【原価法】
原価法とは、実際に商品を仕入れた際の金額をもとに在庫金額の評価を行う方法です。原価法には主に6つの評価方法があります。それぞれの詳細は下記の通りです。
個別法 |
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先入先出法 |
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総平均法 |
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移動平均法 |
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売価還元法 |
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最終仕入原価法 |
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【低価法】
低価法は、購入時の在庫と棚卸資産の時価を比較し、低い方を評価額として採用する方法です。この方法は、在庫品の経年劣化や需要低下によって価値が下がる場合、より適切な評価を行うために有効な方法とされています。
また、トレンド性の高い商品との相性が良く、実際の価値に沿った棚卸し資産の把握ができます。一方、低価法は原価法による評価も必要になるため、計算の手間がかかり、処理も煩雑です。
帳簿棚卸の手順
帳簿棚卸は、在庫数を実際に数える作業は行わず、帳簿上の在庫管理のみを行う作業です。主な手順は下記の通りとなります。
- 在庫状況を管理表へ都度記入
- 在庫管理表をもとに計算
帳簿棚卸は帳簿上の数字を正確に管理するための業務であり、実際の在庫数を数える作業ではありません。したがって、帳簿上の在庫データを実際の在庫数と比較するためには、実地棚卸も行う必要があります。
棚卸しを正確にスムーズに行う方法
ここでは棚卸しをより効率的に行う方法を紹介します。棚卸しは複数人で行うため、在庫の整理やルールの設定といった体制の整備も整えましょう。
普段から在庫の整理を行っておく
棚卸しは一斉に行う作業ですが、日ごろから在庫の整理整頓を徹底すると、棚卸し作業も効率的に進められます。また、入出庫の際には、在庫管理のデータを漏れなく記録することで、正確な在庫数が把握しやすいでしょう。 また、在庫数を多く抱える事業の場合は、棚卸しの頻度を増やすことで、在庫の整理がしやすい環境を整えやすくなります。
ルールを細かく設定し徹底する
棚卸しを行う際、作業者ごとに記入方法や数え方が異なると、入力時のミスや作業時間のロスにつながります。そのため、社内で一貫性のあるルールを確立し、全ての関係者に徹底させることが重要です。
ルールの周知を目的に手順書やマニュアルを作成する際は、目次や図解の入れ込み、難解な表現は避けると、誰が見ても理解しやすい内容になります。
また、イレギュラーなケースに備えてケーススタディも記載しておくと、万が一トラブルが起きても作業への支障が出にくくなります。 ルールの周知後は、きちんと徹底されていることを監視し、必要に応じてルールの改定やマニュアルの改善を行うことも大切です。
二重でチェックを行う
個別で棚卸し作業に取り組む場合、ミスやエラーを見逃しやすくなります。二重チェックは、作業工数がかかるものの、ミスやエラーを防ぐためには不可欠です。チェックの際は2人1組で作業することで、お互いに相手のミスを発見しやすくなります。
実施するタイミングに気を付ける
棚卸しのタイミングは、在庫の移動や出入りが少ない時期の実施が効果的です。なぜなら、入庫や出庫のタイミングで行うと在庫の数え直しや記録の更新が複雑になり、正確性が低下するからです。
棚卸しを行う際は、土日や祝日、閉店後など、在庫が動かない時間を選びましょう。
また、食品や飲料など商品によっては経年劣化を起こすため、確認のためにも月に一度の実施など、頻度を増やすことをおすすめします。
在庫管理システムを使う
在庫管理はエクセルでも行えますが、在庫管理に特化したシステムを活用することで、在庫の更新や確認をより効率的に行えます。その際にリアルタイムで在庫状況を更新・確認すれば、データの正確性も高まるでしょう。
また、入力項目やルールの設定ができるため、エクセルでの入力に比べて記入ミスを減らせることもメリットです。システムによっては、別のツールや会計ソフトとの連携もでき、金額や枢要などの転記ミスの防止にも役立ちます。
まとめ
棚卸しには実地棚卸しと帳簿棚卸しの2つの種類があり、それぞれやり方が異なります。棚卸しの頻度を増やすことで在庫の品質低下を防ぎ、帳簿と実際の在庫数の誤差を減らせるでしょう。
しかし、棚卸しには人員が必要になり、時間もかかるため、頻度を増やすことが難しいかもしれません。
浜松委托運送では、棚卸し業務を含め、物流機能ごとアウトソーシングを検討している企業様のアウトソーシング先として多くの企業様からご利用いただいています。棚卸しの管理に課題を感じている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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