FOBとは、国際貿易において、責任の所在や負担費用の領域を定めた取引条件です。海外から国内に輸入する時などは、買い手と売り手がこのルールに従って取引をします。
FOBの内容が理解できれば、自社の責任や配送コストの把握につながります。国際貿易に携わるのであれば、どんな意味なのか理解を深めましょう。
この記事ではFOBにおける責任所在や売主・買主の負担費用について紹介します。FOBとCIFの違いについても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
■この記事でわかること
- FOBの概要
- FOBとCIFの違い
- FOBにおける売主・買主の負担費用
目次
FOBとは
船積み貨物の引き渡しにおける国際貿易取引条件のひとつ
FOBとは、国際貿易における重要な取引条件のひとつです。国際貿易は、さまざまな国や地域で行われ、法律や商習慣が異なることから、共通の取引ルールが必要とされています。
この共通の取引ルールを定めたのが、国際商業会議所が策定した「インコタームズ」と呼ばれる一連の貿易条件です。インコタームズには、合計で11の異なる規則が存在し、商品の出荷や受け取りにおけるさまざまな要件や責任を規定しています。
そのなかでもFOBは、主に海上輸送や内陸水路輸送において利用される規則です。「Free On Board」の頭文字で、「本船渡し」や「本船積み込み渡し」とも呼ばれます。
FOBの主な特徴は、商品に関する費用の負担や責任所在(危険負担)が、売主と買主の間で明確に規定されている点です。それぞれを明確に規定することで、当事者間での誤解やトラブルを防ぎ、国際貿易においても円滑な取引が行えます。
FOBにおける責任所在
インコタームズでは、売主と買主の義務の責任範囲を以下の表のように定めています。
A | 売主の義務 | B | 買主の義務 |
---|---|---|---|
A1 | 売主の一般的義務 | B1 | 買主の一般的義務 |
A2 | 許可、認可、安全確認およびその他の手続き | B2 | 許可、認可、安全確認およびその他の手続き |
A3 | 運送および保険契約 | B3 | 運送および保険契約 |
A4 | 引渡し | B4 | 引渡しの受取り |
A5 | 危険の移転 | B5 | 危険の移転 |
A6 | 費用の分担 | B6 | 費用の分担 |
A7 | 買主への通知 | B7 | 売主への通知 |
A8 | 引渡書類 | B8 | 引渡しの証拠 |
A9 | 検査―包装―荷印 | B9 | 物品の検査 |
A10 | 情報提供による助力及び関連費用 | B10 | 情報提供による助力及び関連費用 |
引用:インコタームズ2010 | 貿易・投資相談Q&A – 国・地域別に見る – ジェトロ
FOBでは、輸出者(売主)側と輸入者(買主)側の責任が以下のように定められています。
- 輸出者(売主)側
輸出者(売主)は、商品を指定の船舶に荷物を持ち込むまでの責任を負います。つまり、商品が工場から港の船に積み込まれるまでは、輸出者(売主)が責任を負い、それ以降は輸入者(買主)の責任です。
- 輸入者(買主)側
船舶に荷物が持ち込まれてから、荷降ろしや自社までの配送までの責任は輸入者(買主)が負います。そのため、貨物の受け取りや陸上輸送、通関、自社への配送も全て輸入者(買主)の責任です。
このように輸出者側(売主)は自国の港までの責任で済むため、責任の負担が軽く、取引のリスクが低いと言えます。一方、輸入者側(買主)は、商品の受け取りから目的地までの段階で多くのリスクやコストが発生します。
しかし、買主は自分たちで運送などの手配ができるため、スケジュールをコントロールしやすいでしょう。また、取引の頻度や交渉によっては、取引にかかるコストも下げることができます。
CIFとの違い
CIF(Cost, Insurance and Freight)は、FOBと異なる国際貿易取引条件で、運賃と保険料が商品価格に含まれる条件を指します。
FOBとCIFの主な違いは費用の負担先です。FOB取引では、買主側が船舶に荷物を積み込む際の保険料と運賃を支払います。これに対してCIF取引では、売主側が運賃と保険料を負担します。
ただし、商品に対するリスク(商品に対する障害)は、FOBとCIFで条件が変わりません。いずれも商品が船積みされた時点で売主から買主側に責任が移行します。
FOBにおける売主・買主の負担費用
ここでは売主と買主がそれぞれ負担する費用の項目を紹介します。また、FOBにかかるコストとして、以下の2つの変動要素も確認しておきましょう。
- 輸出する荷物の量(重量・面積)
- 通関手数料の申告金額
売主側が負担するもの
FOBにかかるコストとして、売主側は以下の負担費用が発生します。
- 通関費用
- 梱包費用
- 輸出港までの輸送費用
- ターミナルハンドリングチャージ(THC)もしくはコンテナ・ハンドリング・チャージ(CHC)
- コンテナ・フレート・ステーション・チャージ(CFS Charge:混載貨物の仕訳費用)
- Doc fee(アライバル・ノーティス発行費用)
また、梱包材の種類や梱包形態によってFOBにかかるコストは変動します場合によっては大きく費用が増加するケースもあるため、気になる方は事前にどれぐらいの費用がかかるのかを試算しておきましょう。
買主側が負担するもの
FOB取引において、買主側は以下の費用を負担します。
- 海上保険金
- 船舶運賃
- 輸入通関費用
- 目的地までの輸送費用
- ターミナルハンドリングチャージ(THC)もしくはコンテナ・ハンドリング・チャージ(CHC)
- コンテナ・フレート・ステーション・チャージ(CFS Charge:混載貨物の仕訳料金)
- D/O Fee (デリバリー・オーダー・フィー:D/Oの発行手数料)
- その他通貨や燃料価格に応じて変動する費用(CAF,BAF,YASなど)
これらの費用は、船舶に荷物を積み込んで自社へ配送するまでに必要な経費となります。
まとめ
FOBとはインコタームズによって定められた海上貿易に用いられる取引条件です。FOBでは、費用の負担や責任の所在が輸出者側と輸入者側で明確に決められています。
輸出者側は、自国の港までの責任や費用負担で済みます。一方、輸入者側は、荷物の積み込みや自社への配送にコストが発生するため、輸入コストに悩む事業者様も多いかもしれません。
輸入にかかるコストをなるべく抑えたいのであれば、国際物流に強い物流会社へのアウトソーシングを検討することも方法です。
浜松委托運送では保税倉庫を保有しているため、国際物流にも対応いたします。ワンストップの物流体制により、港倉庫と内陸倉庫にかかる入出荷保管料金も削減できるため、気になる方は一度ご相談ください。
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