在庫は、現場が製品を販売するときから経理担当者の帳簿への記入まで、ビジネスのさまざまなシーンで使われる言葉です。適正数の在庫を維持することは経営の成功につながります。
実は、在庫にはさまざまな意味があるため、それらを十分に理解していない方も少なくありません。この記事では在庫の定義や重要性、種類、業界ごとの考え方について解説します。
■この記事でわかること
- 在庫の定義や在庫管理の重要性
- 在庫の種類と例
- 会社・業界ごとの在庫の考え方
目次
在庫とは?
企業が保管している原材料や製品のことを在庫と呼びます。ここでは在庫の定義や種類と例を紹介します。
在庫の定義
在庫とは、企業が販売や生産をすることを目的に、一時保管している商品・製品・原材料・仕掛品を指します。在庫として保管された品は、需要に応じて供給ができるように、倉庫や保管施設で管理されます。
また、在庫は企業が所有している棚卸資産でもあり、経済的な価値を持つ重要な要素です。
在庫の種類と例
主な在庫の種類として、「原材料・構成品」「仕掛品」「完成品」「MRO」の4つがあげられます。それぞれの詳細と具体的な在庫の例は下記の通りです。
・原材料・構成品
原材料・構成品在庫は、製品の製造やサービスの提供に使用される素材や部品を指します。これらの在庫は製品の製造プロセスで使用され、最終製品の一部として組み込まれます。
例:鋼鉄、ゴム、プラスチック、ガラスなど
・仕掛品
仕掛品在庫とは、製品の製造プロセス中に途中で完成したものの、最終製品としての形にはなっていない在庫となります。これらは生産ラインでの作業の一部として保管され、製品が完成するまでの間に必要です。
例:自動車メーカーにおける組み立て途中エンジンなど
・完成品
完成品在庫は、製品が最終的な形態であり、市場に出荷する準備ができている在庫です。これらは顧客への出荷や小売店への供給に使用されます。
例:自動車メーカーにおける、販売のために保管している完成車
・MRO
MRO在庫は、施設や設備の保守、修理、および運用に必要な在庫を指します。これらの在庫は設備の適切な機能を維持し、修理するために必要であり、生産やサービス提供の中断を抑える際に役立ちます。
例:工具、予備部品、消耗品(オイル、フィルター、ランプなど)、清掃用具、保護具、その他メンテナンス用具など
また、上記の在庫以外にも下記のような在庫タイプがあります。
安全在庫 | ・需要の予測誤差や供給の変動に備えて確保される たとえば、天候による遅延や予期せぬ需要の増加に備えて、一定の在庫を持つことが可能 |
---|---|
過剰在庫 | ・需要を上回る量の在庫のこと ・過剰在庫を減らすためにセールや廃棄が行われることがある |
輸送中在庫 | ・供給チェーン内で移動中の製品や資材のこと ・具体的にはトラック、船舶、飛行機などが該当する |
サービス在庫 | ・主に顧客のニーズに応じて確保される在庫 ・具体的には予備部品や交換品などが該当する |
予測/平滑化在庫 | ・需要の変動を平準化し、製品の供給と需要を調整するために使用される在庫のこと ・需要予測に基づいて在庫を管理することで、需要のピーク時にも安定して商品や原料を供給できる |
デカップリング在庫 | ・主に生産と需要の変動を調整し、製品供給と需要を調整するために使われる ・たとえば、部品が足りず生産ラインが止まる恐れがある場合は、 あらかじめ保管しておいた在庫を使用することで生産を続けられる |
帳簿在庫 | ・財務諸表に記録され、経理の目的で使用される ・会社の資産として評価され、会計処理や税務申告に使用される |
在庫管理の重要性
在庫は、顧客に対する迅速な納品やサービスの質を向上させ、生産性を向上にもつながります。そのため、適正在庫を持つことは経営を成功させる近道といえるでしょう。
過剰な在庫は品質の劣化や商品価値を下げる原因となりますが、在庫不足になると、販売機会を逃す可能性があります。したがって、企業は適切な在庫数を維持することが大切です。
合わせて読みたい
在庫管理とは?必要な考え方・目的・具体例を解説なお、売れ行きを予測して在庫数をコントロールすることを在庫引当と呼びます。在庫引当は需要と供給のバランスを調整し、需要の変動に迅速に対応するために有効です。
また、在庫引当を行うことで、納期の遅延を防ぎ、企業の信頼性を高めることにもつながります。
合わせて読みたい
在庫引当とは?実施する意味・タイミング・管理システムについて解説会社・業界ごとの在庫の考え方
在庫の考え方は会社や業界ごとに異なります。ここでは流通・小売業と製造業の在庫の考え方を紹介します。
流通・小売業の在庫の考え方
流通・小売業は、販売のために仕入れた在庫を商品として扱うことが特徴です。特に小売業では、POSシステムを使用して購買データを蓄積し、需要と供給の予測に沿って定量発注方式で在庫を仕入れます。
ほかにも在庫を最適な水準に保つために在庫管理システムも活用する場合もあります。
製造業の在庫の考え方
製造業における在庫は、原材料、仕掛品、半製品、および製品の3つに分けられます。製造業では在庫が必ず商品になる流通・小売業と比べると、工程が複雑です。それぞれの在庫の特徴は下記の通りです。
・原材料
製品の製造に使用される材料や部品を指します。たとえば、鋼鉄、ゴム、ガラス、プラスチックなどが原材料になります。また、ネジやナットのようなすぐ使える部品も原材料の一部です。
・仕掛品
製品の製造プロセスの途中にある部品や製品を指します。これらは一部が完成しており、最終段階に向かって加工や組み立てが行われます。
・半製品 / 製品
製品とは、完成した家具や自動車のような顧客に販売できる状態の在庫を指します。
半製品とは、製品の一部が完成しているが、最終的な形態にはなっていない在庫です。これらは製品の組み立てや仕上げ作業が行われる前の段階で保管されます。たとえば、家具の製造において、木材や金属製部品が半製品として管理されます。
仕掛品と半製品の違いは『販売可能なものか』にあります。例えば、揚げる前のドーナツは仕掛品ですが、揚げて包装前のドーナツは半製品となります。
まとめ
在庫とは、販売や製品を生産するために保管している原材料や製品を指します。在庫管理を適切に行うことで、販売機会の損失防止や経営状況の改善にもつながります。そのため、在庫を保有する企業は、どの業種であっても在庫管理が欠かせません。
しかし、在庫管理の効率化には人手や時間がかかるため、自社リソースに悩みを抱える企業も多いのではないでしょうか?在庫管理を含む物流業務に課題があれば、物流のアウトソーシングをご検討ください。
製造工程が多くなるほど仕掛品や半製品が増えるため在庫管理の負担が増えます。人手が足りない、在庫管理の知見がない、といった場合には物流業者へ在庫管理業務を委託してみてはいかがでしょうか。
浜松委托運送は独自の物流システムを導入し、誤出荷ゼロの高品質な物流サービスを提供しています。在庫管理をはじめ物流業務に課題を感じる事業者様は、ぜひ一度お問い合わせください。
この記事は執筆された時点での情報を元に記載されております。文書・写真・イラスト・リンク等の情報については、慎重に管理しておりますが、閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。記載内容や権利(写真・イラスト)に関するお問合せ等はこちら