倉庫は、経済活動のインフラを支える物流の極めて大切な要素です。倉庫は様々な貨物や荷物を保管したり貯蔵したりするのみならず、物の流れを調整したり、時間差を調整したりできます。しかし、倉庫の違いを正しく理解した上で利用しないと、法律を侵すリスクが生じてしまいます。
この記事では倉庫の定義や種類、物置との違い、今後倉庫に求められる役割などを解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
■この記事でわかること
- 倉庫の定義
- 倉庫と混同されやすいものとの違い
- 倉庫に求められている役割
目次
倉庫とは
倉庫とは物を保管し、貯蔵する機能を有するのみならず、様々な機能を持ちます。倉庫の役割も広く、定義や機能は切り口によって異なります。この章ではそもそも「倉庫とは」について説明します。
定義
倉庫の定義には2つの視点が含まれます。1つ目は一般的な意味、2つ目は法律的な意味としての倉庫です。
- 一般的な意味:貨物や荷物などを保管したり貯蔵したりするための建物
- 法律的な意味:物品の滅失や損傷を防止するための施設
一般的な意味は「貨物や荷物などを保管したり貯蔵したりするための建物」を総称して「倉庫」と呼びます。一方、法律的な意味では「物品の滅失や損傷を防止するための施設」を意味します。その施設には建物だけではなく、貨物や荷物を保管するための工事を施した土地や水面も含まれています。
合わせて読みたい
倉庫業とは?区分や主な仕事、委託するにあたってのポイントを解説機能・役割
倉庫には単純に物を安全に保管したり貯蔵したりするだけでなく、次のように様々な機能があります。
- 輸送機関間の連絡調整
- 生産から消費までの時間差の調整
- 金融補助
- 商品受け渡しの簡素化
- 流通加工
トラックや鉄道、航空機や船といった輸送機関を利用する場合、積み替えのために一時的に物品を保管しなければなりません。この際に倉庫は連絡調整として使用されます。
また、倉庫は物品が適切なタイミングで供給されるよう、産地や工場における生産から消費までの時間差を調整する役割もあります。
さらに、倉庫を利用すると倉庫証券を発行することによる金融補助や現物の商品受け渡しの簡素化が可能です。また保管されている物に対して、市場に流通させるために必要な流通加工を行う機能もあります。
需要や供給の変動、季節要因などにより、物品の流通は変動します。倉庫は物流波動を物品の流れを最適化し、調整する機能を担っています。
種類
倉庫には大きく自家用倉庫と営業倉庫の2つがあります。自家用倉庫と営業倉庫は倉庫業法で定められており、それぞれに可能なことと不可能なことがあります。倉庫の違いを正しく理解した上で利用しないと、法律を侵すリスクも生じてしまいます。
自家用倉庫と営業倉庫の違いを正しく理解することは重要なポイントです。
自家用倉庫
自家用倉庫とは、倉庫の所有者が自社製品などの貨物を保管・管理するための倉庫を意味します。自家用倉庫は企業の敷地内に設置されていることが多く、営業倉庫と比べると作業時間や物の移動時間、コストを削減できる利点があります。
自家用倉庫はあくまで自社製品などの貨物の保管・管理を目的に使用されるので、他社の貨物を預かり保管することはできません。特に火災などの災害が発生した場合は不利益を被るリスクが極めて高くなります。
営業倉庫
営業倉庫とは倉庫業として国から営業を行うことが認められている倉庫です。営業倉庫として営業するためには、国土交通大臣の登録が必要です。
営業倉庫は顧客の貨物を預かり保管するため、一般的な建築物と比較して厳しい基準をクリアする必要があります。営業倉庫は火災保険への加入が義務付けられており、災害やトラブルが発生した際も荷主が被るリスクが低いと言えるでしょう。
営業倉庫は港湾や空港、高速道路のインターチェンジの周辺など、輸出入や物流上のアクセスが便利な場所に多く立地しています。また、農業などの生産地の周辺や製造業の工場の周辺にも多く立地しています。
営業倉庫はさらに下記の3つに分類されます。
営業倉庫の種類 | 詳細 |
---|---|
普通倉庫 | 一般的に利用される倉庫。 幅広い用途に対応しており、農業や鉱業・製造業、サービス業などの産業で利用される |
水面倉庫 | 原木を海や川、河口付近などの水面に浮かべて管理するための倉庫。 水面貯木庫とも呼ばれる |
冷蔵倉庫 | 低温で物を保管するための倉庫。 生鮮食品や冷凍品など、摂氏10度以下で保管が必要なものを保管する。冷凍倉庫も含む |
ただし、水面倉庫に建物はありません。原木は乾燥するとひび割れや品質低下を起こすため、水上に浮かべて保管する必要があります。そのため、面を柵などで囲われた貯木場のような施設になっています。
倉庫を選択する際には、保管する物品の特性や保管すべき温度帯などをしっかりと確認した上で、最も適した倉庫を利用しましょう。
倉庫と混同されやすいもの
物を置く、保管するといった共通点から、倉庫(営業倉庫)と混同されやすい建築物があります。1つ目は物置であり、2つ目は物流倉庫です。倉庫と物置、物流倉庫の違いについて解説します。
物置との違い
物置と倉庫の違いは利用する目的です。居住のために利用するか、保管そのもののために利用するかという点で異なります。
物置 | 居住のために使う従属的な部屋・建物。 当面必要ではない器具などを収納しておく場所 |
倉庫 | 物品や貨物などの保管・貯蔵を行うための建物 |
法律的な視点からみる物置と倉庫の違いは以下の通りです。
不動産登記法第44条で定める、建物の表示に関する登記事項の中にある「建物の種類」では、倉庫は不動産登記規則第113条の12種類の建物の中に含まれています。一方、物置は不動産登記事務取扱手続準則の中にある25種類の中の特殊な建物の1つとして記載されています。
物流倉庫との違い
物流倉庫は、倉庫の基本的な機能である荷物の保管・入出庫のみならず、商品特性に応じた流通加工や検品等の付加価値サービスを提供する倉庫です。物流倉庫には以下の6つの機能があります。
- 輸配送
- 保管
- 荷役
- 包装
- 流通加工
- 情報管理
一般的な倉庫が保管や貯蔵といった単一の機能を提供することに対し、物流倉庫は、さらに付加価値を提供する倉庫であり、SCM(サプライチェーンマネジメント)プロセスの一部として機能します。
合わせて読みたい
物流倉庫とは?機能や業務内容、利用するメリットについて解説合わせて読みたい
サプライチェーンマネジメント(SCM)と物流の違いとは?倉庫に求められる役割は変化している
顧客ニーズが多様化し、経済活動はグローバルに変化する中、サプライチェーンはより複雑化し、より高度化しています。こうした内外の変化に対し、倉庫に求められる役割も日々変化して高機能化が進んでいます。
例えば、厳密な品質管理や温度管理が要求される医薬品を取り扱う定温倉庫や、地震や津波などの自然災害などに対して、被害を最小化し事業の継続性を提供するBCP(Business Continuity Plan:事業継続性)対応の倉庫などがあります。
倉庫とは単に物を保管するのみならず、企業の事業運営を支え、新たな価値提供を生み出すインフラとして、役割が変化しています。
昨今のEC市場の成長に応えるため、より高度に自動化された倉庫も多く建設されています。様々なマテハン(マテリアルハンドリングの略、物流業務を効率化するための 機器)やロボットが導入されている倉庫もあります。
まとめ
顧客ニーズや市場の変化は複雑化し多様化しています。また内外の環境変化も加速しています。こうした中、自社倉庫による物流の事業運営では、柔軟な変化への対応が困難になる可能性があります。
自社倉庫を保有することは多額の固定費やランニングコストが発生し、事業運営の重荷になりかねません。変化が加速する時代に、身軽で機動力のある事業運営のために、物流は専門的なノウハウのある物流業者へ委託することは有効な選択肢の1つです。
浜松委托運送では高品質な管理体制、コストパフォーマンスの高い物流サービスを提供しています。常温倉庫、冷蔵・冷凍倉庫、低温倉庫、除湿倉庫など様々なニーズに答える倉庫を用意し、流通加工サービスも行なっています。
物流倉庫を利用したい場合はぜひご検討ください。
合わせて読みたい
浜松委托運送の物流倉庫について見てみるこの記事は執筆された時点での情報を元に記載されております。文書・写真・イラスト・リンク等の情報については、慎重に管理しておりますが、閲覧時点で情報が異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。記載内容や権利(写真・イラスト)に関するお問合せ等はこちら