物流分野におけるTMSとは、輸送管理システムを意味します。TMSを活用することで輸配送の状況をデジタルで可視化でき、貨物が出荷されてから配達完了となるまでの一連の流れをトータルに管理することが可能です。
TMSの導入には、業務の標準化・効率化といったメリットが期待できますが、導入する際にはいくつかのポイントがあります。WMSとの違いを把握したうえで、自社に最適なTMSを選ぶことが大切です。
この記事では、TMSの機能や導入のメリット、選び方を解説します。
■この記事でわかること
- 物流におけるTMSの概要
- TMSを物流業務に導入のメリット
- TMSの選び方
目次
物流におけるTMSとは
物流におけるTMS(Transportation management system)とは、輸送管理システムを意味します。医療分野にも同じくTMSという用語がありますが、こちらはうつ病などの治療に利用される磁気刺激治療(repetitive Transcranial Magnetic Stimulation)のことであり、厳密にはrTMSのことです。
物流分野におけるTMSは、配車計画や運行管理を支援する輸送・配送に特化したシステムであり、医療分野のTMSとは異なります。
TMSの機能
TMSには、主に以下の機能が含まれます。
- 配車業務の管理機能
- 貨物の追跡(トラッキング)機能
それぞれの機能が物流にどう役立てられるのか、具体的にチェックしてみましょう。
配車業務の管理機能
荷物を運送会社や車両に割り当て、配車業務を支援する機能です。荷物の輸送に最適な運送会社やトラックの種類、輸送温度帯、輸送モード(貸切・混載)などをTMSが選定していきます。
最適な配送計画を立てるには、納品場所・時間帯・待機・納品方法などのさまざまな条件と空きトラックの情報を組み合わせなければなりません。TMSを活用すれば、稼働できる車両やドライバーを登録することにより、配送順やルート、荷物の予定到着時刻などを容易に割り出すことが可能です。
システムによっては、自動配車機能や自動積み付け機能も備わっています。
貨物の追跡機能
荷物の輸送中の状況をリアルタイムで追跡する機能です。輸送には「中継」「配達」などポイントとなるイベントがあります。トラックがイベントを経て「配達完了」となるまでの進捗を追跡することで、トラブルが起きた際に遅れが大きくならないようすぐ対処できるほか、顧客からの問い合わせにもスムーズに答えられます。
貨物の追跡のみならず、トラックや車両の運行状況の管理も可能です。デジタコ(デジタルタコグラフ:走行速度・走行時間・走行距離などの情報を記録するデジタル式の運行記録計)やドラレコ(ドライブレコーダー:車載型の映像記録装置)を使うことで、車両の燃費や、ドライバーが安全運転を行っているかなども確認できます。
WMSとの違い
物流分野で利用されるシステムには、TMSのほかにWMSもあります。WMS(Warehouse Management System)とは倉庫管理システムのことを指し、倉庫内の物流業務を管理して、円滑に運営するためのシステムです。輸配送の管理を行うTMSとは利用目的と機能が異なります。
WMSとTMSを連携させることで、短時間かつリアルタイムに配車組み・最適なピッキング指示を行うことも可能です。
TMSを物流業務に導入するメリット
配車業務は従来、ベテランの配車担当者の経験やノウハウに依存しやすい属人的な業務でした。そこでTMSを導入することにより、配車業務が標準化できれば、属人的な業務から解放されます。
また、配送状況の可視化によって、スムーズな問い合わせへの対応やデジタルデータの活用を図ることもできるでしょう。加えて、積載率の向上によりトラック車両の有効利用も可能になります。
積載率の向上
TMSを活用することで、精度の高い配車計画が立案でき、積載率が向上します。2024年問題によりドライバーの人材不足が深刻になりつつあるなか、限りあるトラックの有効活用は極めて重要なポイントといえるでしょう。
また、積載量の向上は運送事業者だけでなく、コストを削減したい荷主企業にとっても大きなメリットです。最適な配車計画を実行することで、無駄な輸送が減少し、CO2の排出量も抑制できるため、環境負荷への配慮にも寄与します。
配送状況の可視化による業務効率化
TMSでは、ドライバーの稼働状況に加えて荷物の配送状況も可視化できます。輸送会社に「いつ到着するのか」などの問い合わせがあった際、その都度ドライバーへ確認の連絡をするのは非効率です。TMSの追跡機能によって配送状況をリアルタイムで共有できれば、荷主や荷受人からの問い合わせ自体が減り、業務負荷を削減できます。
TMSの追跡機能によって配送状況をドライバーとリアルタイムで共有できれば、荷主や荷受人からの問い合わせに対しても迅速に回答できるようになり、業務負荷を削減できます。
また、人件費や燃料費などの配送コストをTMSが自動計算し、集計したデータに基づいて人員配置や配送計画を立てられるため、効率の良い配送が実現できるでしょう。
配車業務の標準化
配車業務はベテランの配車担当者や従業員に依存しやすい業務です。しかし、ベテランの従業員は高齢なケースも多く、後継者の育成も課題となります。このときTMSを活用することで、特定の配車担当に頼りきりだった作業を標準化することが可能です。結果として属人的な配車業務から脱却し、新人でも適切に配車計画が立てられるようになります。
TMSを継続的に使用していると、遅延や渋滞しやすい道路のデータが蓄積され、より最適なルートや出発時間を割り出しやすくなる点もメリットです。
人材が集まりにくい運送事業において、配車業務の標準化と後継者の育成は事業継続のためにも必要なポイントです。
TMSの選び方
TMSを選ぶ際には、以下4つのポイントを確認しましょう。
- 課題解決できる機能があるか
- コストパフォーマンスに優れているか
- 操作性・使いやすさはどうか
- サービス提供者の実績は十分か
順に詳しく解説します。
課題解決できる機能があるか
TMSには、さまざまな機能があります。そのためTMSの選定にあたっては、自社の課題解決に必要な機能が備わっているかの確認が必要です。
デジタコ・ドラレコなどの機器をはじめ、WMSや請求システムなど周辺システムとの連携がしやすいのかも大切なポイントになります。効率化を期待するのであれば、自動配車や積み付け機能も必要になるかもしれません。
配車業務のノウハウが多く織り込まれていれば、新人スタッフでも難なく業務に取り組めるでしょう。
コストパフォーマンスに優れているか
TMSを導入する際、コストパフォーマンスの良さも重要な要素です。必要とする機能が揃っている状態で初期費用やランニングコストが見合っているシステムか、料金と機能のバランスを確認しましょう。コストを抑えるためには、クラウドシステムやSaaSなどの活用も有効です。
パッケージシステムはカスタマイズが可能ですが、初期費用が必要になるため、中小の輸送会社の場合は投資価値があるか慎重に判断しなければなりません。クラウドサービスは初期費用を抑えられる一方で、カスタマイズに限界があります。自社に必要な機能と資金をふまえて、最適なものを選んでみてください。
TMSは月額費用のみで利用できるサブスクリプションサービスの料金体系を選択すると、導入しやすいのではないでしょうか。
操作性・使いやすさはどうか
TMSを選ぶ際は、操作性にも重きを置きましょう。上記でも触れたとおり、配車業務を標準化できることがTMSの大きなメリットです。よってシステム導入後には、新人であっても、ベテランの従業員と遜色なくスムーズに業務を遂行できる必要があります。
業務効率化のためには、多種多様な条件とパラメータを組み合わせて、最適な配車を行わなければなりません。そのためのノウハウが織り込まれたTMSであれば、誰もがベテランの配車担当者と同じように作業ができます。加えて、画面やスクリーンなどのUI(ユーザーインターフェース)の使いやすさもチェックしてみてください。
サービス提供者の実績は十分か
TMSの信頼性を見極めるには、サービス提供者の導入実績を確認してみましょう。システムの導入実績は、サービス提供者の技術力の高さや強みを判断できる貴重な材料です。実際に導入した物流事業者・輸送会社からの評価も参考にすると良いでしょう。
導入後のサポートや、システムトラブル発生時の対応の手厚さも忘れず確認しておきたいポイントです。
TMSには配車業務のみならず、請求や支払い業務、経営分析の機能を有するシステムもあります。自社の課題やニーズを把握して、最適なTMSを選択しましょう。
まとめ
TMSは、属人化しがちな配車業務を標準化し、新人やベテランに関係なく最適な輸配送を計画できるようトータルで支援するツールです。TMSの導入には、オペレーションの可視化による業務効率化をはじめ、積載量の向上や人員・配送コスト削減など多くのメリットが期待できます。
自社に最適なTMSを選ぶには、課題解決に直結する機能があるか、コストと機能のバランスはとれているか、操作性が良いかなどを確認しましょう。導入コストが高くなりすぎるという場合、クラウドシステムやSaaSなども検討してみてください。
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