共同物流とは、複数の企業が保管・荷役・輸配送などの物流機能を共同で担う取り組みのことです。 従来のような単独の荷主企業による物流機能では、コストダウンの実現が困難であったり、2024年問題によるトラックドライバーの不足が深刻化したりする可能性があります。そのようななかで、共同物流は物流機能を担保しながらコストや効率化などの課題を解決に導くために有効な手段です。
この記事では、共同物流の役割と3つの区分、利用のメリット・デメリットを解説します。
■この記事でわかること
- 共同物流の区分
- 共同物流を利用するメリット・デメリット
目次
共同物流とは
共同物流とは、複数の企業が倉庫や配送センター、輸送手段を共有し、保管・荷役・輸配送などを共同で行うことを意味します。
輸配送運賃の高騰やトラックドライバーをはじめとする運送業の人材不足が問題視されるなか、共同物流は人的資源の有効活用と効率的な輸配送の実現、温室効果ガスの削減などの側面から注目されるようになりました。
共同物流の実現には、車両の積載量アップや物流拠点の増設、共同輸配送など企業間のヨコの連携のみにとどまらず、サプライチェーン上の多くの関係者によるタテの連携も不可欠です。
日本の物流が持続的に機能するよう、国土交通省でも共同物流による生産性の向上を見据えた施策を打ち出すなど、企業の垣根を超えた連携が推奨されています。
企業間競争では「競合相手に負けたくない」との意識が働きますが、物流領域は差別化を望むことが難しいため、競争領域ではなく協調領域になりつつあります。
共同物流の区分
共同物流は、組み合わされる企業の種類によって以下の3つに分類が可能です。
- 同業種における連携
- サプライチェーン全体の連携による共同化
- 物流ネットワーク資産の活用による共同化
順に詳しく解説します。
同業種における連携
同業種における連携とは、同じ業種で異なる企業が荷量の集約を行い、水平方向で共同化することを指します。その主な目的は荷物の量的拡大のメリットを得ることであり、コストダウンや効率化の実現が可能です。
具体的な取り組みとしては、共同保管や共同受発注、共同保管、共同輸配送、ユニット標準化などの連携が挙げられるでしょう。加工食品業界において、複数のメーカーが物流機能を最適化するために出資をし合い、各社の物流事業を統合させた企業を立ち上げた例もあります。
サプライチェーン全体における連携
サプライチェーン全体における連携とは、メーカー・卸・小売の流通に関わる三層が垂直方向で在庫情報や販売情報、輸配送情報などを共有化することを意味します。生産から店頭販売までの川上から川下へいたるプロセスを、各層の企業が共同プラットフォームを運営することで物流の効率化を目指す方法です。
各企業でこれまで実施していた固有の作業手順や取引制度の変更、物流インフラの改廃、新たな情報システムの構築などを伴うため、企業間の調整は欠かせません。そのためサプライチェーン全体における連携は、効率化に向けた大きな効果が見込まれる一方で、実施の難易度は高いともいえるでしょう。
物流ネットワーク資産の活用における連携
各物流事業者が持っているネットワーク資産を活用し、共同化を行う取り組みです。主に、複数の物流事業者が保有する資産やノウハウを活用して、各種物流サービスを構築することを指します。これにより、1社の物流事業者ですべてのサービスをまかなうよりも安価でのサービス提供が可能です。
各社の集荷技術や配送センターの運営、納品代行など、業種業態に特化した物流資産と専門能力を活かし、それぞれを連携させることで高品質な物流が実現できます。
2022年には大手コンビニ3社によって、配送センター間の物流の効率化や遠隔地の店舗への配送の共同化について共同配送の実証実験が実施されました。
共同物流を利用するメリット
共同物流を行うメリットとして、以下の5点が挙げられます。
- 配送を効率化できる
- ドライバーの業務負担が減少する
- コスト削減ができる
- 小口配送の対応ができるようになる
- 荷受人の受け取りにかかる手間を削減できる
それぞれ詳しく見てみましょう。
配送を効率化できる
共同配送では、複数の荷主の荷物をエリアごとの拠点にまとめて、トラックなどの輸送手段に積載し、配送を行います。こうすることで1輸送あたりの積載率が向上するため、配送の効率を上げることが可能です。
また、輸送ルートを固定した場合、納品時間の安定につながります。同時に、後部にトレーラーを取り付けたダブル連結トラックの活用や、共同モーダルシフトへ移行するという方法もあるでしょう。運行時刻が決まっている貨物列車などを利用することで、納品時間がより安定しやすくなる場合があります。
ドライバーの業務負担が減少する
人材不足が叫ばれる物流業界では、ドライバーの確保や労働環境の改善など、いわゆる2024年問題が大きな課題になっています。これに対し、共同配送は一度に複数の荷主の荷物や多くの荷物を運べるため、配送頻度や納品頻度を低減し、ドライバーの長時間労働の改善や業務負担の減少につなげることが可能です。
また、共同配送によって輸送ルートを固定化することで納品時間を一定にできれば、荷受側の荷役作業の負担も減らせます。
コスト削減ができる
配送の効率化によって、配送頻度やトラックの走行距離を削減できるでしょう。少ない台数の車両で輸送できるため、ドライバーの人件費やトラックの燃料費といったコストの削減にもつながります。
小口配送の対応ができるようになる
共同配送によって配送ルートが一元化されると、小口配送の対応がしやすくなります。生産元が直接配送を行うケースだと、小ロットの注文では配送コストが高くなってしまい、取引できない場合も考えられるでしょう。
しかし、配送ルートを一元化したうえで複数の荷主の貨物を同時に運ぶようにすれば、小ロットの注文であっても配送コストだけがかさむ心配はありません。これによって、さらに多くの納品先へ商品供給が可能になります。
荷受人の受け取りにかかる手間を削減できる
共同配送では、荷受人の受け取りの負担を削減できます。
荷主ごとに異なるトラックでその都度配送された場合は、荷物が多い・少ないに関わらず荷受側もその都度で受け取りや検品、入庫処理などの対応が必要です。企業によっては、荷受けの対応ごとに現場のスタッフを投入し、シフトを組まなくてはならないかもしれません。
一方、共同配送では荷主が異なる商品も同じタイミングで納品されるため、荷受側の業務負担が削減できます。また、配送効率の向上も期待できるでしょう。
共同物流では物流を一元化することによって、荷主側と荷受側の双方に対してコスト削減や荷受けの負担軽減などのメリットがあります。
共同物流を利用するデメリット
共同物流には上記のようなメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。複数の荷主で輸送手段などの物流資源を共有するため、自社の都合のみで輸配送ができない場合があることを念頭に置いておきましょう。
臨機応変な対応が難しい
共同物流は、単一の荷主の荷物のみを輸送するのではなく、複数の荷主企業が共同で荷物を輸送することを推奨した取り組みです。輸配送の効率化が望める一方で、自社の変更は他社の輸送にも影響するというデメリットがあります。
荷物の追加などは他社の積載量を減らしかねないほか、出荷時間の変更は他社の物流センターの到着時間にも影響を与えるでしょう。共同物流は、こうしたイレギュラーへの対応がしにくい点で、利便性に難を感じるかもしれません。
配送状況を把握しにくい
共同配送では、複数の荷主の荷物を混載して輸送します。他社の荷主の輸送状況や荷受状況の影響を受けるため、自社の荷物が現在どこにあるのか、いつ到着するのかなどの配送状況を正確に把握することが難しくなるでしょう。
この課題を解決するべく荷物の位置情報などを追跡する場合は、既存システムの改修や新たなシステムを共同で導入するなどの変更が必要となる場合があります。共同でシステムを利用するのであれば、顧客情報や社内情報の扱いについても企業間で新たに取り決めを交わさなくてはなりません。
情報共有が必要になる
複数の企業が共同で物流業務を行うことになるため、企業間で商品情報や配送情報、荷受情報などの情報共有が必要になります。情報共有のためのプラットフォームとして、システムの導入や情報共有の仕組みも構築しなければならないでしょう。
各荷主企業の物流部門の管理者や窓口担当者のみならず、現場の担当者間など社内外の関係者の連携が重要になります。情報共有が正確に行われなかった場合、誤出荷や納品の遅れなどのトラブルにつながりかねません。
配送業務における品質の統一が難しい
配送業務の品質は、荷主企業ごとに異なります。各社の配送料金や配送用の資材を新たに統一する難しさも、共同物流の課題の一つです。
配送料金
単一の荷主が配送を行う場合、トラックの配送料金は荷主と輸送会社とのあいだで個別に設定されます。対する共同物流では、複数の荷主企業がトラックを共有するのが一般的です。そのため、連携する企業で話し合って配送料金を調整し、妥当な料金設定を行う必要があります。
輸送事業社に対する請求方法や支払い方法が荷主企業ごとで異なる場合も、統一しなければなりません。
配送資材
共同配送では複数の荷主の荷物を混載する必要があり、積載効率を上げるためにも、荷姿の形状や輸送資材の規格を統一しなければなりません。単一の荷主の場合、段ボールなどの梱包資材は、商品特性や各社の基準に基づいて選定されています。パレットなどの輸送資材についても、サイズや形式が各々の荷主に適正化されているものです。
このことを踏まえると、共同配送には荷姿が統一されている貨物や、毎日少量ずつ配送される日用品・医療品・食料品などが適しているといえます。一方で、大きすぎる荷物や梱包されていてもいびつな形の荷物などは、積み込みに手間がかかったり、他の荷主の荷物が積めなくなったりするため、共同配送には向きません。
まとめ
共同物流とは、複数の荷主企業が保管や荷役、輸配送などを共同で行う取り組みのことです。配送の効率化やコスト削減を図れるほか、複数の荷主の荷物を同時に配送できるため、荷受人の負荷を軽減することにもつながります。
ただし、共同物流にはこうしたメリットがある反面、複数の荷主が連携する以上、情報共有が必要になることや柔軟性に欠けることがデメリットです。物流の効率化に有効ではあるものの、実施するにはハードルが高いと感じることもあるでしょう。その場合、物流業務を委託して効率化を図るというのも一つの手段です。
共同物流を含めた物流業務全体の見直しをお考えの方は、浜松委托運送へご相談ください。
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